🔥【ニッセイ基礎研レポート】恋愛・未婚化の背景に潜む「年収300万円の壁」と若者消費の変化とは?

2019年6月17日付でニッセイ基礎研究所の久我尚子主任研究員が寄稿された「令和時代の若者消費」シリーズ第7弾の記事は、現代の若者が抱える「恋愛離れ」と「未婚化」の深い背景にある経済格差に鋭く切り込んでおり、SNSでも「#恋愛離れ」「#未婚化」といったハッシュタグで大きな反響を呼んでいる注目すべきテーマです。

「○○離れ」という言葉を頻繁に耳にする現代において、その一つとして挙げられるのが「恋愛離れ」です。国立社会保障・人口問題研究所が実施した「出生動向基本調査」(2015年)によると、18歳から34歳の未婚者に占める異性の交際相手がいない人の割合は、男性で約7割(69.8%)、女性でも約6割(59.1%)に上っており、この数値は年々増加傾向にあるのです。驚くべきことに、交際相手がいない人のうち、およそ4割はそもそも異性との交際を「希望していない」と回答しています。

かつて恋愛に消極的な男性は「草食系男子」と呼ばれましたが、最近ではさらに一歩進んだ「絶食系男子」という言葉も生まれているそうです。これは、女性との関係を持たなくとも人生を十分に楽しむことができる男性を指します。彼らの消費行動は、恋人と過ごす「恋人消費」よりも、友人との時間を重視する「友達消費」へと変化しており、居酒屋に留まらず、カフェ、映画館、さらには東京ディズニーランドのような場所まで、男子会(女性が中心の女子会に対して、男性だけの集まり)の場が広がっている状況が見て取れます。

この「恋愛離れ」は、結果として「未婚化」を加速させる要因となっています。国勢調査のデータによれば、1990年代から2000年代初頭にかけては、20代および30代の未婚率は一貫して上昇を続けました。2010年ごろからはそのペースはやや緩やかになっていますが、今後も大きな変動は予想されないという見解です。特に、50歳を迎えた時点での未婚率を指す「生涯未婚率」は、2015年の時点で男性が23.4%、女性が14.1%に達しており、社会全体として無視できない大きな変化と言えるでしょう。

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未婚化の背景にある構造的な変化

未婚化が進行する背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。その一つとして、女性の社会進出が挙げられます。女性が経済力を持ち、男性に頼らずとも自立した生活を送れるようになった結果、結婚の必要性を感じない女性が増えているのです。これに加え、男性側にも、経済的な不安が増大しているという構造的な問題があります。

具体的には、男性の非正規雇用者が増大し、正規雇用者であっても「賃金カーブの平たん化」が進んでいることが挙げられます。「賃金カーブ」とは、年齢を重ねるごとに給与が上がっていく様をグラフにしたもので、これが平たんになるということは、若い時期の収入は一時的に増えたとしても、将来的に安定した収入の増加が見込めなくなっていることを意味します。これにより、結婚や家庭を持つことに対して、男性側が自信を持てなくなっているという現実があると考えられます。

特に、30歳前後の男性に注目すると、年収と既婚率の間には強い相関関係が見られます。しかし、年収が1500万円を超える層では、この関係は逆転し、既婚率はむしろ低くなる傾向にあります。特に若い世代ほどこの傾向は顕著だというのです。これは、高い収入を得るために仕事が多忙を極め、結婚相手を探す時間がない、もしくは経済的な余裕から「いつでも結婚相手を選べる」という意識が生まれている可能性を示唆しているのかもしれません。

結婚を阻む「年収300万円の壁」の正体

さらに興味深いのは、各年齢層の平均的な既婚率が、年収300万円付近の既婚率とほぼ一致しているという点です。これは、年齢を問わず年収が300万円に満たない層では未婚者が多く、年収が300万円を超えると既婚者が増加に転じる、いわば「結婚における年収300万円の壁」が存在することを示しています。この金額は、結婚というライフイベントを考える上で、一つの大きな経済的な目安になっていると言えるでしょう。

しかし、これは単に「300万円」という金額だけの問題ではありません。正規雇用の男性の年収は、現時点では年齢とともに上昇し、ピークである55歳から59歳では平均で約700万円程度になります。一方、非正規雇用者の場合は、年齢を重ねても必ずしも年収は増えず、平均して300万円を超えることが難しい状況が続いています。つまり、この「年収300万円の壁」が意味するのは、額面の問題ではなく、「安定した職に就いているかどうか」という、より構造的な雇用の壁だという分析です。

内閣府が実施した「2010年度結婚・家族形成に関する調査」の結果は、この分析を裏付けています。20代から30代の非正規雇用者の男性の約8割が、配偶者や恋人がいないと回答しており、そのうちの半数はこれまでの交際経験もないというのです。ここから見えてくるのは、若者の間で広がる経済的な格差が、そのまま恋愛の機会の格差、さらには将来的な家族形成の格差へと直結しているという、非常に深刻な現実です。私は、この経済格差がもたらす「格差の連鎖」こそが、少子化という社会全体の大きな課題の根幹にあると強く感じています。若者の未来のためにも、この構造的な壁をどう乗り越えるか、社会全体で知恵を絞るべき時期に来ているのではないでしょうか。

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