2019年6月17日、欧州各国で次世代通信規格「5G」の商用化が次々と始まっています。特に注目すべきは、この新しい通信インフラの一部に、中国の通信機器大手である華為技術(ファーウェイ)の製品が少なくない企業で採用されている点でしょう。米国政府がファーウェイ製品の排除を各国に強く働きかける中、欧州の通信事業者はその高性能とコスト競争力を評価し、すでに同社製の基地局を導入した5Gサービスを稼働させているのです。
5Gは、現行の4Gと比較して通信速度が最大100倍にもなるとされ、単にデータ通信の大容量化や高速化を実現するだけでなく、IoT(アイ・オー・ティー)や自動運転といった次世代技術を支える不可欠なインフラ基盤となります。 ここでいうIoTとは、Internet of Things(モノのインターネット)の略で、身の回りのあらゆるものがインターネットに接続され、相互に情報をやり取りする技術を指します。 当初、欧州主要国は米国や韓国が2019年4月に商用化を先行させていたのに対し、やや出遅れていましたが、ここに来て一気にサービス開始の動きが加速しています。
スイスが先陣を切る!ファーウェイ全面採用の衝撃
欧州で最も早く5Gの商用サービスを開始したのはスイスです。携帯電話大手のサンライズは、2019年4月からすでに150もの市町村で通信サービスを展開しており、そのネットワークインフラは全面的にファーウェイの技術を採用しています。5月半ばには、米グーグルがファーウェイに対し基本ソフト(OS)の**「アンドロイド」供給を制限する可能性を示唆し、一部の国でファーウェイ製スマートフォンの販売を見合わせる動きが見られました。しかし、スイスのサンライズの店頭では、ファーウェイの5G対応スマートフォンが引き続き販売されており、その勢いは衰えていない状況です。
また、スイスのもう一つの主要キャリアであるスイスコムも、欧州で初めて本格的な5G商用化を始めました。このスイスの動きは、他の欧州諸国における5G戦略に大きな影響を与えていると考えられます。
英国の大手キャリアもファーウェイ製品を一部採用
スイスに続き、英国でも5Gサービスが始まりました。 英BTグループ傘下の携帯最大手EEは、2019年5月にロンドンなどで5Gの提供を開始しました。EEの広報担当者の説明によると、ファーウェイの製品は「ネットワークの中核設備では使用しない」ものの、「アンテナなどの無線通信ネットワークの一部では使用する」ということです。中核設備とは、通信ネットワークの中心的な部分で、大量のデータを処理・管理する心臓部にあたる装置群を指します。 また、同じく英国のボーダフォン・グループも2019年7月に5Gサービスを始める予定であり、こちらも一部の設備でファーウェイの機器を使用していることが明らかになっています。
なぜ欧州の通信事業者は、米国の排除要請にもかかわらずファーウェイ製品を採用し続けるのでしょうか。調査会社IHSマークイットのデータによれば、2018年の世界の携帯基地局市場におけるファーウェイのシェアは31%でトップを占めていました。その理由は、その優れた性能に加えて、北欧のエリクソンやフィンランドのノキアといった競合他社の製品よりも価格が安いと評価されている点にあります。特に欧州市場ではファーウェイのシェアは高く、4割を超えているのが実情です。
インフラ移行の現実的な課題と各国の思惑
多くの携帯事業者がファーウェイ製品の導入に傾く背景には、技術的な側面と経済的な側面の両方があります。 5Gネットワークは、多くの場合、現行の4G(フォージー)ネットワークを基盤として構築されます。英国では、すでにほぼ全ての通信事業者がファーウェイの4G機器を採用している状態です。そのため、5Gへの移行に伴って全ての機器を他社製品に交換すると、コストが大幅に増大し、現実的ではないという判断が事業者にはあるのです。
政府の視点からも、5Gの導入遅れは避けたいという強い思惑があります。5Gは自動運転などの将来の革新技術を巡る国際競争に欠かせないインフラです。もし、特定の企業を認めるかどうかの決断が長引き、サービス開始が遅延すれば、そのしわ寄せは利用者へと及び、国家としての競争力の低下にもつながりかねません。そのため、ドイツ政府の関係者からは、「一部の機器でファーウェイを導入して様子を見る**」といった、実用性を優先しつつ慎重な姿勢に傾く考え方が示されています。
私個人の意見としては、通信インフラのセキュリティは極めて重要であるものの、欧州の通信事業者がファーウェイ製品を選択する経済合理性と技術的な優位性は無視できない現実だと思います。高性能で安価な機器を採用し、いち早く国民に5Gの恩恵をもたらすことは、企業の競争力だけでなく、その国のデジタル化を促進する上でも重要な判断でしょう。セキュリティリスクの懸念に対し、技術的な評価や管理体制の強化でどこまでカバーできるかが、今後の欧州各国、そして世界の課題となるでしょう。
この欧州における5G商用化とファーウェイ採用の動きは、米中間の貿易摩擦が激化する中でも、グローバルな技術競争と経済合理性が複雑に絡み合う現代のテクノロジー業界の縮図を表しているといえます。今後の欧州市場の動向、そして世界各国がどのような5G戦略を描くのか、引き続き注視していく必要がありそうです。
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