2019年6月、次世代の高速通信規格である5G(第5世代移動通信システム)の商用化が欧州各国で次々と始まっています。この5Gは、従来の4Gに比べて通信速度が格段に向上し、例えば自動運転や遠隔医療など、社会のあり方を大きく変える可能性を秘めている通信技術なのです。しかし、そのインフラ整備において、世界的な通信機器大手である中国の**ファーウェイ(華為技術)社製基地局をめぐる動向が、大きな注目を集めています。
アメリカのトランプ政権は、安全保障上の懸念を理由に、ファーウェイ製品の排除を各国に強く働きかけていますが、欧州連合(EU)は、加盟国ごとの判断に委ねるという姿勢を示している状況です。これは、EUが長らく掲げてきた自由貿易の原則に鑑み、特定の企業を公的に締め出すことの難しさが背景にあるといえるでしょう。一方で、この問題は単なる経済的な議論に留まらず、国家間の安全保障という、非常にデリケートな問題も絡んでいます。
アメリカと機密情報を共有する「ファイブアイズ」の一員であるイギリスでさえ、ファーウェイの完全排除に同調してはいません。むしろ、多くの欧州諸国が模索しているのは「排除しないが、リスクは徹底的に管理する」という現実的な道筋なのです。この姿勢は、コストパフォーマンスに優れたファーウェイ製品を導入しながら、同時に情報漏洩などの懸念を払拭しようとする、実利を重んじた欧州らしいアプローチだと言えるでしょう。
実際、2019年6月4日に英国を訪問したトランプ大統領は、メイ首相との会談後の記者会見で、ファーウェイを含む全ての事項でイギリスと合意できる、違いを乗り越えることは可能であると発言しました。アメリカ側は、要求に応じない場合は安全保障に関する情報共有を縮小する可能性を示唆していましたが、トランプ氏はその考えを否定したのです。これは、イギリスがアメリカの強硬な要求に対して、独自の判断を維持する余地が残されたことを示唆しているのではないでしょうか。
もしイギリスがアメリカの排除要求に従い、ファーウェイ製品を導入しないという決断を下すことになれば、5Gのインフラ展開が他の欧州諸国に比べて大幅に遅れる可能性が指摘されていました。この状況は、いち早く5Gによる経済効果を実現したい欧州各国にとって、無視できない大きなジレンマであったに違いありません。この報道を受け、SNS上では「技術の進歩を政治が邪魔するのはおかしい」「安全保障と技術導入のバランスが難しい」といった、多くの反響が見られました。
私は、各国が自国の経済的利益と安全保障を天秤にかける中で、EUが示した「各国の判断に任せる」という姿勢は、最も賢明な対応であると評価しています。国際的なルールに基づき、特定の国や企業を恣意的に排除するのではなく、技術的なリスクアセスメント(危険性の評価)**を厳格に行い、サプライチェーン全体の安全性を高めることが、長期的な国益につながるのではないでしょうか。欧州が示す「リスク管理」のアプローチは、日本を含む世界各国にとって、非常に重要な指針となるでしょう。
コメント