2019年10月09日、緊迫するイギリスのEU離脱(ブレグジット)交渉は、まさに正念場を迎えています。ボリス・ジョンソン英首相が提示した新たな離脱案に対し、EU側は冷ややかな視線を送っていますが、果たしてこのまま拒絶し続けて良いのでしょうか。現在、SNS上でも「合意なき離脱だけは避けてほしい」「各国のエゴが見え隠れする」といった不安の声が渦巻いています。
EU内部は決して一枚岩ではありません。ドイツなどは供給網(サプライチェーン)の混乱を恐れて妥協を模索する一方、フランスはイギリスが「テムズ川のシンガポール」になることを警戒しています。これは、離脱後のイギリスが極端な減税や規制緩和を行い、低コストな経済モデルでEUを脅かす存在になるという懸念です。各国が自国の利益を優先する中で、大局的な戦略が失われているように見受けられます。
新提案は「議論のたたき台」として検討すべき価値がある
ジョンソン氏の提案は、北アイルランドを工業・農産品分野でEUの「単一市場」に残しつつ、関税同盟からは離脱させるという複雑なものです。単一市場とは、人・モノ・サービス・資本が自由に移動できる経済圏を指します。メイ前政権の案よりも技術的な解決が容易であるという見方もあり、頭ごなしに否定するのは短絡的と言わざるを得ません。
EUがこの提案を完全に拒絶すれば、イギリスに残された道は、屈辱的な離脱撤回か、経済に致命的な打撃を与える「合意なき離脱」の二択に絞られてしまいます。もし決裂すれば、2018年時点で約83兆7000億円にものぼる英EU間の膨大な貿易額が危機にさらされます。アイルランドの国境問題という局所的な利益に固執し、巨大な経済的損失を無視するのは、あまりにリスクが高い選択でしょう。
責任のなすり合いを捨て、今こそ大局的な判断を
現在、ブリュッセルでは「誰が失敗の責任を負うか」という、内向きな責任回避の議論が目立ちます。アイルランドのバラッカー首相も、自国が不利益を被る譲歩をするよりは、合意に失敗した責任をイギリスに押し付ける方が政治的に安全だと考えている節があります。しかし、こうした感情的な対立や保身こそが、最も恐ろしい「合意なき離脱」を招き寄せる要因となります。
私たちが今求めるべきは、EU側がジョンソン案を大筋で受け入れ、技術的な詳細を詰めるための「最後の離脱延期」を認めるという現実的な戦略です。もちろん、イギリス側も労働者の権利や環境基準を維持し、不当な競争を仕掛けないという保証をすべきでしょう。互いの思惑を超えた知性ある合意こそが、2019年10月31日の期限を前に求められる唯一の正解ではないでしょうか。
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