兵庫県の淡路島からほど近い、ハモ漁の聖地として知られる沼島。2019年10月09日現在、この島を訪れると戦後の活気溢れる空中写真が目に飛び込んできます。かつては3000人が暮らし、食糧増産の旗印のもと山頂まで段々畑が広がっていました。しかし、現在の人口はわずか400人余り。かつての畑は青々とした森へと姿を変え、自然の驚異的な回復力を見せつけています。
不動産問題のスペシャリストである牧野知弘氏は、この光景を「人口減少によって土地が自然へと還っていく象徴」だと表現されています。さらに深刻なのは野生動物の影響です。数年前にイノシシが島へ渡ったことで耕作放棄が加速し、里山の管理が立ち行かなくなっています。もはや、すべての土地を一律に守る時代は終わり、管理すべき場所と自然に返す場所を明確に区別するグランドデザインが求められているのです。
SNS上では「故郷がなくなるのは寂しいけれど、インフラ維持のコストを考えれば集約は現実的」といった声や、「空き家だらけなのに新築が建ち続けるのはおかしい」という鋭い指摘が相次いでいます。こうした国民の不安や疑問を背景に、国土交通省の国土審議会は2019年10月中にも、2050年を見据えた新たな国土計画の策定に着手する予定となっています。
2050年の日本を描く「立地適正化計画」と住宅政策の矛盾
2050年の推計人口は1億192万人にまで減少すると予測されています。このままでは、全国の約2割の地域から居住者がいなくなる計算です。政府は「立地適正化計画」を進め、生活に必要な機能を一定範囲に集めるコンパクトシティ化を目指していますが、現実は容易ではありません。住民への配慮や地元の不動産業界への影響を懸念し、郊外の開発を止められない自治体も多いのが実情です。
特に矛盾が際立っているのは住宅政策です。中古住宅の流通を促進すると言いながら、依然として新築住宅には手厚い税制優遇が続いています。これは住宅建設が強力な景気対策としての側面を持つためですが、空き家が増え続ける中で新築を優遇し続ける姿勢には疑問を禁じ得ません。日本もドイツのように、中古物件をリフォームして価値を高める循環型の市場へシフトすべきではないでしょうか。
不動産コンサルタントの長嶋修氏が指摘するように、今の若者世代はかつてほど新築に固執していません。2019年10月09日時点の首都圏では、マンションの成約件数で中古が新築を上回る逆転現象も起きています。人々の価値観が変化している今こそ、古い成功体験に縛られた住宅政策を根底から見直す絶好のタイミングが訪れていると言えるでしょう。
不利益分配の時代へ!政治が示すべき「新たな国造り」の覚悟
1969年に策定された新全国総合開発計画(新全総)から50年。かつては公共事業による「利益の分配」が政治の華でしたが、現在は「不利益の分配」に向き合わなければなりません。土地の所有権制限や居住エリアの集約は「地方切り捨て」との批判を招きかねませんが、インフラ維持が限界に近い以上、国土の縮小は避けて通れない課題です。今こそ政治家には、耳の痛い真実を語る勇気が求められています。
私は、この「国土縮小計画」をネガティブなものと捉えるべきではないと考えます。無秩序に広がりすぎた居住エリアを賢く畳み、限られた資源を価値ある場所に集中させることは、次世代に持続可能な日本を引き継ぐための「攻めの撤退」です。沼島は古事記において日本誕生の地とされていますが、その島が今、新しい時代の在り方を我々に問いかけているのは非常に示唆的です。
戦後の国土計画を牽引した下河辺淳氏のような知恵者が待望される今、私たちは「人がいなくなる国土」をどう愛し、どう管理していくのかという国民的な合意形成を急がねばなりません。過去の右肩上がりの夢を追いかけるのではなく、縮小を受け入れた先にある、豊かで密度の高い社会を目指す覚悟を決めるべき時が来ているのです。
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