2019年10月01日、日本銀行が発表した「企業短期経済観測調査(短観)」の結果は、これからの日本経済が直面する険しい道のりを示唆するものとなりました。消費増税という大きな転換点を迎える中で、特に自動車や小売業といった私たちの生活に密着した業種において、景気の先行きに対する警戒感が顕著に表れています。
この「日銀短観」とは、全国の企業に対して景気の現状や先行きをアンケート調査し、その回答を集計した統計のことです。景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた「業況判断指数(DI)」が、経済の体温を測る重要なバロメーターとして注目を集めます。
今回の大企業製造業におけるDIは、前回2019年06月の調査から2ポイント低下してプラス5という結果になりました。3四半期連続の悪化ではありますが、市場の一部からは「懸念していたほどの急落ではない」という安堵の声も聞かれます。しかし、景気の停滞感が強まっている事実は否定できないでしょう。
消費増税の影と冷え込む企業マインド
2019年10月01日からの消費増税は、企業の心理に確実な影を落としています。宿泊や飲食サービスといった対人サービス業の先行き判断が悪化しているほか、小売業のDIは2014年以来のマイナス予測に転じました。SNS上でも「買い控えが起きるのではないか」という不安の声が、消費者と経営者の双方から漏れ伝わってきます。
一方で、日本経済の下支えとなっているのは、依然として堅調な雇用情勢です。2019年10月01日に厚生労働省が発表した08月の完全失業率は2.2%と、約27年ぶりの低水準を維持しています。仕事を探している人1人に対して何件の求人があるかを示す「有効求人倍率」も1.59倍と高い数値を保ち、働く環境自体は決して悪くありません。
しかし、製造業に目を向けると、米中貿易摩擦の影響による世界的な景気減速の波が、じわじわと忍び寄っているのが分かります。08月の製造業における新規求人数は前年同月比で15.9%も減少しており、これまでのような「人手不足一色」だった空気感に、微妙な変化が生じ始めているのです。
内需の柱「設備投資」はどこまで耐えられるか
今後の景気回復の鍵を握るのは、個人消費の動向と、もう一つの柱である「設備投資」の行方でしょう。2019年度の設備投資計画は、前年度比で2.4%増と上方修正されており、企業が未来に向けて投資を行う意欲自体は失われていません。これは、自動化やデジタル化といった「攻めの投資」が継続している証拠です。
編集者の視点から言えば、今の日本経済は「薄氷を踏むようなバランス」の上に成り立っていると感じます。雇用が守られているうちに、消費税増税による反動減をいかに最小限に食い止めるかが勝負です。政府によるキャッシュレス還元などの対策が、どこまで消費者の財布の紐を緩める効果を発揮するのか、注視が必要でしょう。
日銀の黒田総裁も指摘するように、海外経済の停滞が長引けば、現在は強気な企業の投資姿勢も慎重に転じるリスクを孕んでいます。2019年10月02日現在の状況を見る限り、私たちは楽観視することなく、世界情勢の変化に対してこれまで以上に敏感であるべきだと言えるのではないでしょうか。
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