通信業界の巨人、ソフトバンクが次なる成長のステージへと舵を切りました。2019年10月08日、同社は法人向け事業の営業利益を、2022年3月期までに2019年3月期実績の2倍となる1500億円強へ引き上げる意欲的な目標を掲げました。現在は固定回線や業務用携帯電話が主軸ですが、今後は「ソリューション」へと重心を移します。これは、企業が抱える課題をIT技術で解決する手法を指し、ビジネスのあり方を根本から変える可能性を秘めています。
この戦略の核となるのが、人工知能(AI)やビッグデータの徹底活用です。膨大なデータから価値ある情報を導き出すビッグデータ分析は、現代ビジネスの「新しい石油」とも言える存在でしょう。ソフトバンクは、消費者の位置情報や工場の稼働状況を緻密に分析することで、企業の生産性向上や革新的なマーケティング支援を展開します。SNS上でも「通信会社からデータ活用企業への脱皮だ」と、その変革のスピード感に驚きの声が上がっています。
最強の布陣で挑むデータ経済圏の構築
目標達成への布石は既に打たれています。2019年10月からは、広告大手の博報堂や半導体設計で世界をリードする英アーム社との共同出資会社が始動しました。データの収集から提案までを一貫して行う体制は、競合他社にとって大きな脅威となるはずです。ソフトバンクの強みは、売上高1000億円以上の上場企業の約94%と既に取引があるという圧倒的な顧客基盤にあります。この信頼関係こそが、新サービスを浸透させる最強の武器になるのです。
さらに、次世代通信規格「5G」の到来がこの流れを加速させます。あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT(モノのインターネット)」時代では、流通するデータ量が爆発的に増加します。宮内謙社長は、日本企業の弱点が「データの未活用」にあると断言しました。裏を返せば、そこには巨大な収益機会が眠っているということです。通信と決済インフラを自前で持つ同社にとって、データ経済圏の主導権を握ることは、極めて現実的なシナリオと言えるでしょう。
逆風を追い風に変える多角化戦略の成否
一方で、足元の環境は決して楽観視できません。政府による通信料金の値下げ圧力や、楽天の本格参入という「通信の冬」が迫っています。利益の約9割を個人向け事業に頼る現状からの脱却は、まさに至上命題です。2020年3月期はヤフーの子会社化により最高益を見込むものの、既存事業の成長鈍化を指摘する厳しい市場の目も存在します。2019年10月07日時点の株価が公開価格付近で推移しているのは、期待と不安が入り混じった結果でしょう。
私は、今回の法人シフトこそがソフトバンクを「真のテクノロジー企業」へと昇華させる試練だと考えています。KDDIやNTTドコモも同様の戦略を打ち出していますが、ソフトバンクの強みは、PayPayなどの決済からアームの技術までを網羅する「全方位の守備範囲」にあります。単なるインフラ屋で終わるのか、それとも社会のOS(基盤)になるのか。この3年間の挑戦は、日本のデジタル変革を左右する重要なマイルストーンになるに違いありません。
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