米中貿易摩擦を追い風に!タイ経済特区EECが仕掛ける「脱中国」企業への破格の税制優遇と戦略的誘致

米中間の激しい貿易戦争が世界経済に暗雲を落とす中、東南アジアの優等生であるタイが攻めの姿勢を見せています。タイの巨大経済特区「東部経済回廊(EEC)」のカニット事務局長は、2019年10月09日までに日本経済新聞の取材に応じ、製造拠点の移管を検討する企業に対して、これまでにない手厚い税制上の優遇措置を講じる方針を明らかにしました。

現在、米国による対中制裁関税を回避するため、多くの企業が中国から生産拠点を移す「チャイナ・プラス・ワン」の動きを加速させています。タイ政府はこの好機を逃さず、法人税の軽減などを通じて先端技術の研究開発拠点を国内に呼び込む考えです。SNS上でも「東南アジアへのシフトが現実味を帯びてきた」「タイの決断は早い」といった驚きの声が広がっています。

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経済減速を跳ね返す「タイランド4.0」への情熱

足元の経済状況は決して楽観視できるものではありません。2019年04月01日から2019年06月30日までの実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比2.3%に留まり、年初の予測を下回る結果となりました。主要な輸出先である中国の景気後退が響き、2019年通期の成長率予測も下方修正を余儀なくされています。

カニット事務局長は、現状を「非常に厳しい局面」と認めつつも、この危機をアジア全体の目覚めを促す「警告」と捉えています。単なる工場の誘致ではなく、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった次世代技術を取り込むことで、国の産業構造を高度化させる「タイランド4.0」というビジョンの実現に、強い意欲を燃やしているのです。

「IoT」とは、家電や車などあらゆる物がインターネットに繋がる仕組みを指し、これによって収集された膨大なデータが新たな価値を生みます。事務局長は、こうした技術革新が国民の生活を劇的に刷新すると確信しています。一方で、単に安い労働力を求めるだけの移転は歓迎せず、国の発展に寄与する「質の高い投資」を厳選する構えを見せました。

ファーウェイ容認と日中連携によるインフラ革命

特筆すべきは、次世代通信規格「5G」の導入に関する柔軟な姿勢でしょう。米国が安全保障上の懸念から中国の華為技術(ファーウェイ)を排除するよう各国に働きかける中、タイは「協力も辞さない」と明言しました。5Gは超高速・低遅延の通信を実現する技術で、自動運転やスマート工場の実現には欠かせないインフラであるため、実利を優先した形です。

また、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対しても、タイは極めて冷静な外交戦略を展開しています。借金漬け外交を警戒しつつも、空港開発などのインフラ整備においては日本と中国の連携が可能であると指摘しました。特定の国に依存せず、自国の利益に直結するプロジェクトを見極めるという、中等国ならではのしたたかな知恵が感じられます。

編集者の視点から見れば、今回のタイの動向は、地政学的なリスクを逆手に取った鮮やかな「漁夫の利」戦略だと言えます。米中の対立が深まれば深まるほど、中立的かつインフラが整ったタイの価値は相対的に高まるでしょう。日本企業にとっても、タイが提示する破格の条件は、グローバルサプライチェーンを再構築する上での強力な選択肢になるはずです。

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