2019年6月18日、静岡県内の主要百貨店において、夏の贈答シーズンである「中元商戦」が本格的な熱気を帯びてスタートしています。長らく慣習的な贈答品が中心だったお中元ですが、近年は消費者の志向やライフスタイルの変化に合わせて、各百貨店が独自の新しい提案を打ち出し、注目を集めているのです。儀礼的な贈り物という枠を超え、贈る側も贈られる側も楽しめるような、創意工夫を凝らした商品ラインナップが展開されています。
なかでも特に際立っているのが、松坂屋静岡店の「ヘルシー」と「SNS映え」を意識した商品の強化です。健康志向の高まりを受け、「ナチュラル&ヘルシーギフト」と称する特設コーナーを設けました。例えば、酵素ドレッシングや、新鮮なヨーグルトギフトなど、健康に気を遣う方への心遣いを感じさせる商品が初登場しています。また、色鉛筆を模したバウムクーヘンや、カラフルな野菜や魚介を閉じ込めたゼリーなど、思わず写真に撮って共有したくなるような「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)映え」を意識したギフトも充実させています。松坂屋の広報担当者は、「ギフトを贈る方と受け取る方が、その楽しさを分かち合える」として、この需要は今後も高まるだろうと見解を述べています。
一方、遠鉄百貨店(浜松市)では、自宅需要、すなわち自分や家族で楽しむための「ご褒美品」の拡充に力を入れています。新企画「デリシャスライフ」では、前年のお中元と比較して自宅向け商品を2倍に増やしました。飛騨牛や大阪の老舗のカレー、さらには高級アイスや上質なそうめんなど、少し贅沢な気分を味わえる72品目を、2,700円から1万円程度の価格帯で取りそろえています。遠鉄の広報担当者は、これまで百貨店の贈答品にあまり馴染みがなかった30代から50代を主なターゲットに据え、「自分や家族への特別な夏のお薦め」を集めたと話しています。また、手軽に利用しやすい低価格帯として、しょうゆや洗剤の詰め合わせなど1,000円台からの「お買得品特別販売」も用意し、幅広いニーズに応えようとしています。
中元・歳暮市場の縮小傾向に挑む!若年層と地域密着の新しい一手
全体として、矢野経済研究所の調査によると、ギフト市場は金額ベースで見ると年間1〜2%程度の成長傾向にありますが、中元や歳暮といった季節の贈答市場は縮小傾向にあるとのことです。こうした状況のなか、百貨店各社は、親しい間柄で「相手に心から喜んでもらえるモノ」を贈るという重要性が増していると分析し、この新しい需要をどう取り込むかを課題としています。松坂屋や遠鉄百貨店の取り組みは、まさにこの時代の変化に対応しようとする試みと言えるでしょう。
静岡伊勢丹(静岡市)も、やはり「SNS映え」を意識した商品を強化しており、若年層へのアプローチに積極的な姿勢が見て取れます。果物と葛まんじゅうを合わせたジュレや、金魚が優雅に泳ぐ様子を表現したゼリーなどをラインナップ。さらに、女性農業者の視点を取り入れて商品開発を行う「農業女子プロジェクト」によるアイスなど6品目を主要商品として展開しています。同店の広報担当者は、若者同士の需要を掘り起こすだけでなく、上の世代が若者へ贈る際の選択肢としても活用してもらいたい、との考えを示しています。
また、静岡伊勢丹は、地元の食文化に貢献する料理人を静岡県が認定する「ふじのくに食の都づくり仕事人」が監修した商品を、恒例の地元商材特集「うまいら静岡」で初めて導入しました。老舗の料理店が、森町産トウモロコシ「甘々娘(かんかんむすめ)」を使用したスープやカレーのセットを提供するなど、地域に根差した魅力を強く打ち出しています。ウナギ関連商材も12種類と豊富に取りそろえており、地域色を強く押し出すことで、他店との差別化を図ろうとしていることがうかがえます。
編集者が見る「脱・慣習」時代のギフト選び
近年の百貨店の「中元商戦」の動向を拝見すると、もはやお中元は「贈らなくてはならない」という義務感から、「贈りたい」という純粋な気持ちへと変化していることが分かります。従来の儀礼的な慣習から脱却し、相手のライフスタイルや好みを深く考慮した、パーソナルなギフト選びへと軸足が移っているのでしょう。特に「#SNS映え」や「#ご褒美」といった、現代の消費行動を象徴するキーワードを取り込んでいる点は、まさに時代のニーズを捉えていると評価できます。
SNS上でも、2019年6月時点では、既に「#お中元」というハッシュタグとともに、**「自分用にも買っちゃった」「実家の母に健康志向のものを送ったら喜ばれた」**といった具体的な投稿が増加傾向にあります。これは、贈答品を自宅で楽しむ「ご褒美消費」や、相手の健康を気遣う「実用性重視」の傾向が、SNSというオープンな場で共感を呼んでいることの証左ではないでしょうか。百貨店が打ち出した新しい提案が、消費者にも受け入れられ始めている様子がうかがえます。
私見ですが、こうした「相手の喜びを追求するギフト」への変化は、大変好ましい流れだと思います。百貨店側は、「中元」という伝統的な文化を守りつつも、現代の消費者ニーズに合わせて柔軟に進化していくという、非常に難しい課題に挑戦しています。健康志向やSNSの活用、そして地域特産品へのこだわりは、今後もギフト市場の成長を牽引する重要な要素になるに違いありません。この夏の商戦は、単なる売り上げの多寡だけでなく、百貨店が未来のギフト市場でどう生き残っていくかの、試金石となるでしょう。
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