2019年5月の近畿圏新築マンション市場は、消費者の「買い控え」が鮮明になり、市況の悪化を示す結果となりました。不動産経済研究所が2019年6月17日に発表したデータによると、近畿2府4県(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県)の契約率は68%にまで低下し、前年同月比から2ポイントも落ち込んだのです。一般的に、不動産業界ではこの契約率70%が好不況の目安とされていますが、今回はちょうど1年ぶりにそのラインを下回る形となりました。
この契約率の低下は、主に2つの要因が影響していると考えられます。一つは、短期間で売却しやすい投資用マンション(主に賃貸経営を目的とする物件)の供給数が減ったことです。もう一つは、2019年10月の消費増税への対応措置として、住宅ローン減税が拡充される見込みであるため、多くの消費者がそれ以降の購入に踏み切ろうと様子見している「買い控え」の動きです。特にローンを利用して住宅を購入する場合、増税後の方がより手厚い減税措置が受けられることから、消費者が賢く購入時期を見極めている状況だと言えるでしょう。
実際、2019年5月の発売戸数は1,388戸と、前年同月比で6%の減少を記録し、5カ月連続でマイナスとなっています。この減少には、大阪市を除く大阪府下(33%減)、神戸市(49%減)、京都市(43%減)といった主要都市での大幅な落ち込みが大きく影響しているのです。デベロッパー各社も、消費者の買い控え傾向に合わせて、市場への供給量を意図的に絞っていることが伺えます。
一方で、市場の一部では堅調な動きも見られます。大阪市内では、急増する訪日外国人の宿泊需要に対応するため、民泊対応マンションの建設が相次いでおり、投資用マンションの需要自体は底堅いようです。しかし、そもそもマンション建設に必要な用地の取得が難しくなっている状況も、供給の伸び悩みに繋がっています。
さらに、近畿圏の新築マンション価格は、上昇傾向が続いています。2019年5月の平均価格は4,152万円となり、前年同月と比べて約300万円もの大幅な上昇が見られました。これは、地価の高騰や人件費の高騰が主な原因とされており、特に大阪市内の家族向けマンション(ファミリー層を想定した広い間取りの物件)の上昇が顕著です。その結果、価格が高騰した都心部を避け、堺市など郊外に目を向ける消費者が増える動きも見え始めています。
このような状況に対し、SNSでは「増税後に減税が手厚くなるなら待つのは当然の選択」「土地や人件費の高騰がどこまで続くのか不安」といった、消費者の賢明な判断と将来への懸念を示す反響が多く見受けられます。また「都心が高すぎて、いよいよ郊外の時代が来るのか」といった、購入エリアの変化に対する意見も散見されます。消費者の意識は、目先の価格よりも、減税効果や将来的な資産価値といった長期的なメリットに強く向いていることが分かります。
不動産経済研究所の予測では、2019年6月の発売戸数は1,300戸程度と、前年同月を約7%上回る見通しではありますが、「供給量が本格的に増えるのは秋以降」という見解を示しています。これは、今回の消費税引き上げにおいては、2014年4月の増税時のように直前に駆け込みで購入する需要が少なく、増税が実施された10月以降にこそ、住宅ローン減税拡充を追い風とした本格的な商戦が開始される可能性が高いと見られているからです。
編集者としての私の意見ですが、今回の買い控えは、単なる需要の先送りではなく、消費者側が増税と減税の仕組みを冷静に理解し、最も有利なタイミングを選ぼうとする合理的で賢い行動の結果だと評価できるでしょう。デベロッパーにとっては一時的に苦しい時期かもしれませんが、この期間を活かして、増税後を見据えた魅力的な物件開発や、減税制度を活かした購入プランの提案を強化することが、秋以降の本格商戦を制するための鍵となるでしょう。
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