【地域金融の未来図】ふくおかFGの生みの親・谷正明氏が語る!人口減少・超低金利時代の「面」戦略と地銀に求められる「金融仲介力」

人口減少と歴史的な超低金利という、かつてない厳しい環境下に置かれている日本の地域金融機関。地方銀行の経営が今後どうあるべきかについて、九州地方の地銀再編を主導し、ふくおかフィナンシャルグループ(ふくおかFG)の設立にも尽力された谷正明前会長が、2019年6月18日時点で、その見解を語ってくださいました。谷氏は、現状の銀行業界について、「これからは**『未知の世界』です」と断言されています。

長年にわたり培ってきた従来のビジネスモデルが崩壊の危機に瀕している背景には、少子化による市場の大きな縮小と、異業種を巻き込んだ競争の激化が存在します。これまでの豊富な知識や経験を活かしつつも、その知恵に固執しすぎてしまうと生き残ることは困難になるだろう、と警鐘を鳴らしています。地域経済を支える地方銀行が生き残る道は、「地域でいかにリスクを取って**、金融仲介機能を発揮できるかに尽きる」と、谷氏は強調しています。もちろん収益を追求するのは当然のことですが、単に利益を上げれば良いというわけではなく、メガバンクとは全く異なる業態としての役割を果たすことが地銀には求められている、というのが氏の基本的な考え方です。

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長崎・十八銀行との統合と不良債権処理のエポック

2019年4月1日にふくおかFGの傘下に入った長崎県の十八銀行(現・十八親和銀行)との経営統合では、公正取引委員会からの承認を得るまでに、地域の金融インフラ保護と競争環境維持という社会的な議論が巻き起こりました。谷氏は、公取委から統合が承認されたことで、「両者を共存させることが大きな命題として課されました」と述べ、統合による効果を地域に還元すること、そして顧客に納得してもらえるよう努力を続ける必要があるという認識を示されました。特に、過疎化が進む離島など、人口減少が著しい地域での金融インフラ維持は喫緊の課題です。谷氏は、たとえ非効率であっても「残さなくてはいけないもの」は存在するとし、離島からの店舗撤退はしない方針を明確にしています。

一方で、人口減少は地銀の努力だけではどうにもならない厳しい現実であるため、今後は信用金庫や信用組合といった他の地域金融機関とも協働し、地域全体の金融インフラを守るという視点も必要になるだろう、との見解も示されました。半世紀以上にわたる谷氏のバンカー人生で、特に印象的だった出来事としては、2001年の赤字決算を**「ひとつのエポック」として挙げています。当時、金融機関の破綻が相次ぐ危機感や閉塞感の中で、不良債権の徹底的な処理によって、新しい道へ踏み出そうと決意されたそうです。最初の試算を大幅に上回る、最終的には1,752億円という巨額の不良債権処理を実行された際には、債務超過にならず、その後の収益回復を描けるという検証結果が、当時の会長、頭取、そして副頭取であった谷氏自身の三者で一致していたと振り返られています。

「死に物狂い」での決断と実行でしたが、この処理によって道が開け、その後のV字回復へとつながりました。この経験が、ふくおかFG誕生の原動力にもなっています。不良債権問題の後処理に目処がついた後、縮小均衡では立ち行かないと考えた谷氏は、「規模を拡大しよう」と決断されました。最初は福岡銀行の本拠地である福岡に留まらず、未開拓だった九州全域へ拠点を強化する「点から線」の戦略を構想されました。

「面」での拡大と「シングルプラットフォーム・マルチブランド」の真価

拡大戦略を推進する中で、経営危機に陥っていた熊本ファミリー銀行(現・熊本銀行)や親和銀行との統合話が浮上したことで、「線」よりも「面」での拡大がより良いという発想へと転換されます。これは、救済という側面がありながらも、結果的に福岡銀行にもプラスになると考えられたからです。また、合併ではなく持株会社**(ホールディングス)を設立した理由として、地銀が持つ歴史や地域との強い結びつきを無視した合併は困難であるため、これを尊重する必要があったため、と説明されています。しかし、顧客にとっては異なる銀行であっても、内部から見れば一つの組織でなければ統合の意味はありません。

そこで採用されたのが、システムなどの基盤を統一しつつ、各銀行のブランド名や地域性を維持する**「シングルプラットフォーム・マルチブランド」という戦略です。この仕組みは、統合相手を受け入れやすい枠組みとして機能し、12年を経て「本当にこなれてきた」と谷氏はその完成度を評価しています。今後、さらに連携を深める銀行が現れるとしても、このビジネスモデルである「全体最適が部分最適を優先する」という考え方を理解して受け入れていただくことが、成功の鍵となるでしょう。

この谷氏の力強い発言に対して、SNS上では「地域金融の再生には、これくらいの覚悟が必要」「不良債権処理のエピソードがすごい、経営者の胆力がV字回復を生む」といった、地銀経営におけるリスクテイクの重要性やリーダーシップへの期待を示す声が多く見られました。特に、地銀の存在意義を「金融仲介力」に尽きるとする考え方に対して、地域の中小企業経営者からは「景気が悪くなった時こそ、支えてくれる地元の銀行が頼りになる」という共感と期待のコメントが寄せられています。

【記者の視点】試される「地域活性化」への覚悟

ふくおかFGが十八銀行と統合してから約2カ月半(2019年6月時点)が経過し、ふくおかFGの柴戸隆成会長兼社長は、顧客からの資金調達環境について「変化したとの声は聞かれない」と述べ、統合による悪影響はないことを強調されました。金融政策が緩和方向に振れている現状では、統合で圧倒的なシェアを手にしたことを利用した「不当な金利引き上げ」は起こりにくいと見られています。しかし、地域の企業の関心は、米中貿易摩擦などに起因する景気減速リスクが懸念されるなか、「景気が悪化した場合に支えてくれるか」という点に集まっています。

地域経済を活性化させるための具体的な「解」を、ふくおかFGがどのように示していくのか、その覚悟が今まさに試されている局面にあると言えるでしょう。地域経済を支える地銀の存在は、単なる資金の貸し手という役割を超え、地域社会の未来を共創するパートナーとしての重責を担っているのです。私は、谷氏が示されたように、リスクを恐れずに地域へ資金を供給し、産業の新しい芽を育てていくという攻めの姿勢**こそが、この厳しい時代を乗り越えるための唯一の道であると確信しています。

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