2019年6月18日、東京都の小池百合子知事が、都内の二酸化炭素(CO2)排出量を2050年に「実質ゼロ」とする長期目標を宣言しました。これは、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」を踏まえ、日本政府が掲げる「今世紀後半のできるだけ早期」という目標よりもさらに踏み込んだ、非常に意欲的な計画です。この大胆な「ゼロエミッション東京」実現に向けた宣言は、海外メディアやSNSでも「東京が世界の潮流をリードする」と大きな反響を呼んでいます。私自身、この決断は都市が果たすべき環境責任として高く評価すべきだと考えます。
この「実質ゼロ」とは、私たちの生活や産業活動で排出されるCO2の総量を、植林などによる吸収や、CO2を回収して再利用する技術(カーボンリサイクル)などによって、差し引きでゼロにするという考え方、すなわちカーボンニュートラルを指します。すでにフランスやイギリスが同年の実質ゼロを表明しており、世界的な大都市である東京の参加は、この目標を世界の主流にする力となるでしょう。小池知事は5月21日、東京・新宿で開催された世界の主要都市の首長らを集めた国際会議「U20(都市版首脳会議)」の場で、事前の予告なくこの宣言を行い、会場からは驚きと期待の拍手が沸き起こりました。
宣言の翌日となる5月22日には、小池知事はイタリア・ローマのビルジニア・ラッジ市長や大阪市の松井一郎市長らと共に、永田町の首相官邸を訪れました。そこで、U20の共同声明を安倍晋三首相に提出し、同年6月28日と29日に大阪で開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)において、環境対策の強化を重視するよう強く要望したのです。これは、東京という都市が、都市外交を通じてサミット外交を動かし、世界的な目標を実現しようとする壮大な構想であり、その実行力が今、問われています。
この壮大な構想を単なる絵空事に終わらせず、実効性のあるものとするためには、具体的なCO2削減策が不可欠です。その中でも特に重要となるのが、電気自動車(EV)をはじめとする排ガスゼロ車の普及を加速させるためのインフラ整備でしょう。現状、ガソリン車における給油所のように充電施設が少ないことが、EV普及の大きな障害となっています。都は現在約300基にとどまっている急速充電器を、2030年までに1,000基へと3倍以上に拡充する具体的な計画を打ち出しました。
さらに、東京都は2030年には、都内における新車販売に占める排ガスゼロ車の割合を、現在の約2%から50%へと大幅に引き上げることを目指しています。この大幅な台数増を実現するためには、個人による購入を本格化させることが鍵となります。そこで、都は同年4月から、それまで中小企業のみを対象としていたEVの購入補助制度を、個人を含む全てに対象を拡大しました。具体的には、充電インフラの拡充と、個人に対して1台あたり30万円の購入補助金を組み合わせることで、ガソリン車やディーゼル車からの乗り換えを強力に後押しする戦略を進めているのです。
小池知事は、この実質ゼロの実現には、自身が好んで用いる武道の格言に例え、「心技体」が重要だと強調しています。すなわち、技術革新の「技」、政策や制度面の「体」、そして都民や企業、自治体などの意識である「心」が三位一体となって初めて目標を達成できると訴えているのです。特に、最も大切だとされる「心」、つまり都民や産業界の環境意識をどのように変革していくのか、その道のりは決して平坦ではないでしょう。私は、個々人が未来への責任を感じ、ライフスタイルを見直すことが、この壮大な目標を実現する最後のピースになると確信しています。
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