米中貿易摩擦の暗雲か?2019年秋の広州交易会開幕、揺れる中国製造業の最前線と世界経済の行方

2019年10月15日、中国最大級の規模を誇る貿易商談会「中国輸出入商品交易会(通称:広州交易会)」が、広東省広州市にてその幕を明けました。このイベントは世界200カ国以上から約20万人ものバイヤーが集結する、まさに「世界の工場」中国の勢いを象徴する場といえるでしょう。会期中に交わされる成約額は、今後の世界貿易の動向を占う重要な先行指標として、投資家や経済アナリストからも熱い視線が注がれています。

しかし、華やかな開幕の裏側では、長引く米中貿易摩擦の影が色濃く落とされています。会場に集まった中国メーカーの担当者からは、対米輸出の激減や世界的な景気減速を嘆く声が相次いで聞こえてきました。広州交易会は春と秋の年2回開催されますが、実は2018年秋と2019年春の成約額は2回連続で前年実績を割り込んでおり、今回の開催も非常に厳しい局面でのスタートとなったのです。

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制裁関税の直撃を受ける現場の苦悩

山東省から参加した金属加工機メーカーの営業担当者は、欧米から訪れたバイヤーへ必死にアピールを続けていました。こちらの企業では、かつて売上高の3割から4割を占めていた米国市場が、2018年7月に発動された対中制裁関税の影響で一変したといいます。制裁関税とは、特定の国からの輸入品に対して高い税率を課す措置のことで、これにより価格競争力が失われ、受注は瞬く間に激減してしまいました。

顧客を繋ぎ止めるために、メーカー側が増税分の一部を自ら負担するという苦渋の決断を迫られているケースも少なくありません。前述のメーカーでは、関税の割り増し分の3分の1を自社で被ることで、なんとか契約を維持しようと奮闘しています。利益を削ってでも市場に踏みとどまろうとするその姿からは、自由貿易の恩恵が失われつつある現代の厳しい商戦のリアリティが、ひしひしと伝わってくるようです。

「一帯一路」へ活路を求める中国企業

一方で、特定の顧客との強固な信頼関係により、現時点では受注に影響が出ていない企業も存在します。福建省の通信機器メーカーは、米国のスキー場などに警備用無線機を納入していますが、担当者は「太い顧客がいるため安心だ」と語りました。しかし、その表情は決して晴れやかではありません。中国の通信技術に対する警戒感が世界的に強まるなか、米国でのさらなる事業拡大はもはや困難であると冷静に分析しています。

こうした企業が次に狙いを定めているのが、中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」の沿線諸国です。一帯一路とは、古代のシルクロードをモデルに、アジアから欧州、アフリカまでをインフラ整備で繋ぎ、巨大な市場を作り出そうとする構想を指します。米中対立という壁に突き当たった中国メーカーにとって、新たな販路を開拓し、生存戦略を練り直すことは、いまや避けて通れない最優先課題となっているのでしょう。

冷え込む投資意欲と世界貿易の不透明感

米中摩擦の余波は、直接的な貿易だけにとどまらず、製造業全体の投資意欲を減退させるという負の連鎖を生んでいます。山東省の精密加工機メーカーの担当者は、米国向けの売上比率はわずか1%未満であるにもかかわらず、この1年で経営環境が急激に悪化したと訴えます。世界的な不透明感から多くの企業が設備投資を手控えており、その影響が川上の製造装置メーカーにまで波及している事実は、看過できない問題です。

世界貿易機関(WTO)も、2019年10月の発表で、同年の世界の物品貿易量の伸び率予測を従来の2.6%から1.2%へと大幅に下方修正しました。この数字からも、世界経済のエンジンが停滞し始めていることが明らかです。SNS上でも「安価で高品質な製品が届かなくなるのでは」「経済の冷え込みが日本にも飛び火しそうだ」といった、消費者の不安を反映した投稿が目立っています。

中国対外貿易センターの徐兵副主任は、開幕直前の記者会見にて、保護主義の台頭が中国の貿易環境をかつてないほど複雑で厳しいものにしていると指摘しました。一国主義的な動きが強まるなか、私たちは単なる国家間の争いとしてではなく、供給網(サプライチェーン)全体の変革期としてこの事態を捉える必要があるでしょう。経済の安定こそが世界の平和に繋がると信じ、対話による解決を願わずにはいられません。

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