2019年6月9日、茨城県つくば市で開催されたG20貿易・デジタル経済相会合が成功裏に閉幕しました。閣僚や国際機関の代表、そしてメディア関係者など、およそ1,000人規模の参加者が集う、茨城県にとって過去最大級の国際会議となりました。厳重な警備体制のもと、会合は無事に終了し、議長を務めた世耕弘成経済産業大臣や河野太郎外務大臣、石田真敏総務大臣といった主要閣僚からは、県や市への感謝の言葉が述べられたのです。この大規模な国際会議の開催は、科学技術の国際拠点である「つくば」のポテンシャルを世界に示す貴重な機会になったといえるでしょう。
しかしながら、筆者はこれらの称賛の言葉を素直に受け止めることができませんでした。ある政府関係者の方が会期中、「宿泊施設の『アメニティー』が不十分なところがあり、海外の要人をもてなすという点で疑問が残る」と漏らしていたからです。この「アメニティー」とは、ホテルで提供されるシャンプーや石鹸、タオル、そしてこの記事のケースでは「バスローブ」といった、快適な滞在をサポートするための設備や備品を指す専門用語です。海外からの要人の方々が、もし宿泊施設の待遇面に不満を抱いたとしたら、それは大変残念なことです。
実際、ある要人が6月15日から16日に長野県軽井沢町で開かれるG20環境・エネルギー相会合への参加を見送ろうとした際、先の政府関係者は「軽井沢のホテルはもっと設備が充実していますから大丈夫です」と返答したというエピソードも耳にしました。つくば市内のホテル経営者の方も、会議開催前には「普段は出張者や観光客が少なく、経営は厳しい」と話されていたそうです。このような日常的な状況の中で、市内のホテルが、世界のVIPをもてなすために必要な最上級のサービス水準を継続的に提供し続けるのは、現実的に難しい問題だといえるのかもしれません。これは、つくば市が国際的なイベントを誘致する上で、都市全体の受け入れ態勢を整備していく必要があることを示唆しているといえるでしょう。
課題は宿泊施設だけにとどまりません。東京から取材に来た同僚を、地元の食事で労おうとした際も、会場周辺にある飲食店は週末のため休業していたり、予約が取れなかったりという状況に直面しました。結局、筆者は隣接する土浦市に最近オープンしたレストランへ同僚を案内し、彼らは満足してくれたようです。ですが、国際会議の開催地であるつくば市内で、地元の魅力を伝える「おもてなし」ができなかったことに、大きな疑問が残りました。
ここで筆者の意見を述べさせていただければ、県や市は、国際会議という千載一遇の機会をもっと積極的に活用すべきだったと考えます。たとえば、歓迎レセプションで提供された茨城県産の地元食材を、会期中だけでも周辺の飲食店で提供するよう呼びかけたり、近くの商店で地元の日本酒やワイン、そしてお菓子などを土産物として販売するような工夫はできなかったのでしょうか。SNSでの反響を見てみても、「G20が行われるなら、地元の美味しいものが食べられるチャンスなのに」「つくば発のお土産を期待していた」といった声が散見されました。来訪者が、その土地ならではの食や文化を体験できる機会を提供することは、国際会議の成功を左右する重要な要素の一つだと確信しています。
🌍国際会議を「地域活性化」と「市民参加」のレガシーへ
過去に筆者が取材した、パリやペルーのリマで開催された地球温暖化対策の国際会議では、会場周辺で企業や「NGO」(非政府組織:Nongovernmental Organizationの略。政府から独立した立場で社会貢献活動を行う民間の団体を指します)によるサイドイベントが数多く開かれ、地域全体が大きな盛り上がりを見せていました。一方で、今回のつくばでのG20会合はもちろん、昨年同じ会場で開かれた「世界湖沼会議」や「国際情報オリンピック」といった国際的なイベントも、その周辺で目立った市民活動や関連イベントはほとんど見られなかったのです。
国際会議を単なる「無事に終わらせるイベント」として捉えるのではなく、市民が積極的に関わり、訪れた人々を心から歓迎して、その街に長く滞在したくなるような魅力を創出していくことが大切ではないでしょうか。国際会議の終了とともに、イベントの熱が冷めてしまうのではなく、この経験を未来へと受け継ぐ「レガシー」(遺産)にすることが重要でございます。今回のG20開催を契機に、つくば市が真の国際都市として、どのように「おもてなし」の質を高め、市民の誇りとなるような国際交流の遺産を残していけるのか、その未来に大いに期待したいものです。
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