「老後2000万円問題」が大きな話題となる中、私たちにとって最も身近で重要な公的年金制度、特に「厚生年金」への注目がかつてなく高まっています。民間企業に勤める方が加入するこの制度は、日本の公的年金制度の「2階部分」にあたるとされ、その仕組みや今後の変化について「知りたい」という声が多く聞かれます。公的年金は、全ての国民が加入する「国民年金」という1階部分の上に、会社員などが加入する厚生年金が重なる2階建て構造になっているのが特徴です。そのため、厚生年金の受給者は国民年金分も受け取ることができ、一般的に自営業者など国民年金のみに加入する方よりも、将来的に受け取れる年金額が多くなるとされているのです。
会社員の方は、毎月の給与や賞与から厚生年金の保険料が天引きされていますが、これが将来の年金給付の重要な財源となっています。この厚生年金について、今、「加入年齢の上限引き上げ」や「短時間労働者への適用拡大」という大きな制度改正の議論が進んでいるのをご存知でしょうか。長寿化が進み「人生100年時代」と呼ばれる現代において、私たちは老後の資金をどう確保していくかが切実な課題となっており、年金制度もこの長寿化に対応していく必要が生じているのです。
長寿化に対応!厚生年金「70歳以上」加入可能へ?
厚生年金は、働き始めると同時に加入が始まるため、10代から加入している方もいらっしゃいます。以前、加入できる年齢の上限は64歳まででしたが、2002年度には69歳まで延長されました。そして今、この上限を70歳以上に引き上げる検討が進められています。長く働くことで保険料の支払い期間も長くなり、その分、将来受け取れる年金額を増やすことが可能になります。これは、長生きリスクに備える有効な手段の一つといえるでしょう。しかし、長く働きたいと望む人にとっては朗報である一方で、保険料の半分を負担する企業側からは、慎重な意見も出てくることが予想されます。今後の議論の行方に注目していくべきでしょう。
ここで、厚生年金の加入者は**「第2号被保険者」と呼ばれることを確認しておきましょう。これは、かつて会社員向けの厚生年金と、自営業者向けの国民年金が別々に運営されていたものが、1985年の年金制度改革で統合された経緯によるものです。この改革により、20歳から60歳の全居住者が国民年金に加入する制度となり、その加入者が3種類に分類されました。第2号被保険者は、この厚生年金の加入者であると同時に、国民年金の加入者でもあるという位置づけになっているのです。
保険料は「標準報酬月額」で決まる定率制
会社員の方が厚生年金と国民年金の両方に加入している場合、給与から天引きされるのは厚生年金の保険料だけです。これは、国民年金に必要な資金が厚生年金から移転されているためで、国民年金保険料を別途支払う必要はありません。国民年金が定額制であるのに対し、厚生年金は定率制で保険料が決まります。具体的には、毎月の給与や賞与(専門用語では「標準報酬月額」や「標準賞与額」と呼びます)に、定められた保険料率をかけて算出されるのです。
この算出された保険料は、企業と従業員とで折半して負担する仕組みです。従業員に給与を支払う企業側には保険料を納める義務があるため、従業員の給与から本人負担分を天引きし、会社負担分と合わせて納付しています。以前は、年金給付に必要な額に応じて保険料率が変動する仕組みでしたが、高齢化の進行で受給者が増え、試算では保険料率が25.9%まで跳ね上がる可能性が指摘されました。もしこの水準になれば、従業員は給与の12%以上を負担することになり、大きな社会問題になりかねません。
そこで導入されたのが、2004年の「保険料水準固定方式」です。これは、保険料率の引き上げを18.3%で上限とし、この範囲内で給付水準を調整するという考え方への転換でした。企業と折半するため、従業員の負担は半分の9.15%となります。料率は毎年段階的に引き上げられ、2017年9月にこの上限である18.3%に達したため、これ以降は給与の増減によって保険料の金額が変わることはあっても、料率自体は変わらないことになっているようです。この制度設計は、際限のない保険料率の上昇を食い止め、現役世代の負担を予測可能な範囲に留めるために非常に重要な決定であったと、私は考えています。
40万人以上が対象に!短時間労働者の厚生年金加入拡大
さらに注目すべきは、短時間労働者(パート・アルバイトなど)の厚生年金加入が拡大していることです。かつて厚生年金の適用基準は、正社員の所定労働時間の4分の3以上とされていました。しかし、働き方の多様化や高齢化に伴い働き手を増やす必要性から、この基準が緩和されました。2016年10月には、従業員501人以上の企業を対象に、週20時間以上の労働時間、賃金月額8.8万円以上**、勤務期間1年以上などの要件で加入が可能になりました。さらに2017年4月には、労使合意があれば500人以下の企業も対象となりました。
この適用拡大により、2019年1月現在で43.3万人もの短時間労働者が新たに厚生年金に加入しました。特に40~50代の女性や、60代のシニア層が多く適用対象となっているようです。厚生年金に加入することで、働く側は将来受け取れる年金額が増えるなど、様々な給付のメリットを得られます。国はさらなる適用拡大を検討しており、今後は従業員規模の要件などが見直される見通しです。短時間労働者が増える現代の働き方に合わせた制度への進化は、多様な働き方を支え、老後の安心につながる一歩として、非常に歓迎すべきことであると申し上げたいです。
また、2015年10月には、公務員や私学教職員が加入していた「共済年金」が厚生年金に一本化されました。これは「被用者年金の一元化」と呼ばれ、400万人以上の人が厚生年金に転換した結果、厚生年金の被保険者数は一気に4000万人を超えることになったのです。公的年金制度は複雑に思えるかもしれませんが、私たちの生活と老後を支える大切な基盤です。加入条件や保険料の仕組み、そして今後の制度改正の動向について、今後も注目していくことが不可欠でしょう。
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