2019年6月19日付の日本経済新聞の報道によると、日本の上場企業がお金を「ため込む」のではなく「使う」姿勢へと、財務戦略を大きく転換していることが明らかになりました。2018年度、上場企業約3,600社(金融・日本郵政を除く)は、設備投資やM&A(エムアンドエー:企業の合併・買収)に約52兆円という、過去最高の資金を投じたのです。これは、前の年度に比べて3%の増加であり、3年連続で記録を更新する水準となっています。背景には、海外企業の大型買収や、小売業などで深刻化する人手不足への対応投資が活発化したことがあります。世界経済、特に中国景気の減速という逆風が吹く中でも、各企業が将来の成長を最優先する姿勢を鮮明にしていることが見て取れるでしょう。
この積極的な動きは、企業の資産効率や収益力の改善に直結する可能性を秘めています。企業の投資活動を表す投資キャッシュフロー(工場や機械の取得・売却、M&Aなどにかかった資金の流れ)の支出額は、51.6兆円に上りました。この投資のトレンドは以前から増加傾向にあり、5年前と比べても2割強高い水準で推移している状況です。業種別に見ると、電機や自動車などの製造業で減少が目立った一方、非製造業である小売業などの伸びが顕著となりました。特に医薬、化学、繊維、小売、建設、サービスといった業種では、過去最高の投資額を記録したとのことです。
医薬・化学業界では、海外での大型M&Aが相次ぎました。例えば、武田薬品工業はアイルランドのシャイアーを、三菱ケミカルホールディングス傘下の大陽日酸は米プラクスエアの欧州事業の一部をそれぞれ買収しました。これは、グローバルでの競争力を高めようとする強い意図の表れだと考えられます。また、非製造業を中心とした省力化投資も非常に活発に行われている状況です。大成建設はロボット施工などのIT(情報技術)投資を強化し、ソフトウエアなどの無形資産の保有額が5年前の2.6倍に拡大しています。さらに、イオンはタッチパネル式のセルフ決済レジを導入して業務の簡素化を進める一方で、中国や東南アジアで商業モールを増やしており、その投資キャッシュフローは約6,600億円と前の年度の1.5倍に急増しています。
一方で、気になる点もあります。企業の事業活動で得た現金の流れを示す営業キャッシュフローは、2018年度に59.5兆円と、前の年度に比べて7%減少しました。これは、中国景気の減速などが影響した結果だと見られています。にもかかわらず、企業は積極的な投資やM&Aのために、この営業キャッシュフローの86%もの資金を使った計算になります。この比率は5年前と比べて5ポイントも上昇しており、企業が稼いだお金の大部分を成長のための投資に回していることがわかります。これに加えて、企業は株主への還元も積極的に拡充しています。配当の支払額は11.4兆円と2%増加し、自社株の取得(純額)も5.4兆円と7割も増えている状況です。
投資と株主還元を合わせた支出額は、合計で68.4兆円に達し、これもまた過去最高を更新しました。これは、営業キャッシュフローを約9兆円も上回る金額であり、まさに「攻めの財務」と呼ぶべき姿勢でしょう。野村証券の美和卓氏も指摘するように、企業統治改革の流れを受けて、「資金を非効率にため込むのではなく、投資や株主還元を充実させる経営」が強く求められるようになったことが、この変化の大きな要因と推察されます。実際、上場企業の「2社に1社」にあたる約1,630社が、営業キャッシュフローを上回る資金を投資や株主還元に回していることが判明しました。
この結果、長らく指摘されてきた日本企業の「カネ余り」の状態には、徐々にブレーキがかかりつつあります。有利子負債(銀行からの借入金など)は251兆円と4%弱増えましたが、企業の手元資金(すぐに使える現金)の増加は122兆円と1%増にとどまっています。その結果、手元資金を差し引いた純有利子負債は、4年ぶりに増加に転じ、129兆円に達しました(なお、元記事では「129億円」とありましたが、正しくは「129兆円」と訂正されています)。日本経済新聞の調査では、2019年度も企業は設備投資を約10%増やす計画があるものの、米中貿易摩擦などを巡る不確実性から、みずほ総合研究所の酒井才介氏が指摘するように「投資は鈍化しやすい環境」にあることも事実です。今後、企業がいかに資金を効率的かつ戦略的に使っていくことができるかが、将来の収益性を左右する重要な鍵となるでしょう。日本企業がグローバル競争を勝ち抜くための「攻めの姿勢」を維持できるのか、今後の動向から目が離せません。
SNSでの反響:日本の企業変革に対する期待の声
この一連の報道を受けて、SNS上では多くのポジティブな反響が見られました。「日本企業がついに貯め込み体質から脱却し始めた!」「デフレ脱却や経済活性化につながるニュースだ」といった、企業変革への期待を込めた声が多数寄せられました。特に、人手不足に対応するための省力化投資の増加に対しては、「生産性が向上し、働き方改革にも繋がるはず」と具体的な効果を予測する意見が目立ちました。また、大型の海外M&Aについても、「グローバルな視点での成長戦略は必要不可欠」「国内市場に留まらない攻めの姿勢を評価したい」といった、前向きなコメントが飛び交っています。稼いだお金を内部留保するのではなく、未来への再投資や株主還元に回すという財務の健全化に向けた動きは、多くの読者に好意的に受け止められていると言えるでしょう。この流れが持続し、日本経済全体を押し上げる力になることを、私は強く望んでいます。

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