2019年6月18日から2日間にわたり、アメリカの中央銀行にあたる米連邦準備理事会(FRB)は、金融政策を決定する米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催しています。2018年12月以降、政策金利の引き上げ(利上げ)を休止していたFRBですが、深刻化する「貿易戦争」の懸念を背景に、年内にも金利を引き下げる「利下げ」に転換する可能性を示唆し始め、世界経済の注目を集めているところです。市場参加者や専門家の間では、今回の会合での金融緩和への転換は見送られる公算が大きいとみられていますが、**「いつ、どの程度まで」**利下げの可能性や時期について言及するのかが、最大の焦点となるでしょう。
FRBのジェローム・パウエル議長は、2019年6月4日の講演で、利下げへの転換の可能性を初めて公に示唆されました。「貿易交渉の米経済への影響を注視し、成長持続のために適切な行動をとる」と強調したこの発言は、それまでの「金融政策は利上げ、利下げのどちらかに動かす必然性はみられない」というスタンスから一変したものとなりました。これは、特に米中間の貿易摩擦に起因する経済の減速リスクに対して、FRBが強い警戒感を抱き始めたことの裏付けと言えるでしょう。2015年12月から再開された利上げサイクルは2018年12月をもって停止されていましたが、いよいよその流れが逆転し、金融緩和へ舵を切る兆しが見え始めています。
投資家の間では、FRBが年内に金融緩和へ移行することはすでに「既定路線」として織り込まれています。実際に先物市場の予測では、2019年12月までに利下げが実施される確率が98%という、極めて高い数値で示されているのです。FRB高官からも利下げ転換を示唆する発言が相次いでいます。例えば、FRBの理論的支柱とされるリチャード・クラリダ副議長は、景気拡大期にもかかわらず株式市場を支える目的で金融緩和を行った1998年の事例を引き合いに出し、景気悪化を未然に防ぐための「予防的利下げ」に踏み切る可能性を繰り返しにおわせているのが現状です。
金融緩和の時期と市場の動向
ニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁も2019年6月6日の講演で、貿易戦争の影響で「成長鈍化の兆しがある」と指摘されました。さらに、セントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁は同年6月3日に「利下げが近く正当化されるかもしれない」と、利下げ実施の時期にまで踏み込んだ発言をされました。しかし、今回の6月18日から19日のFOMCで即座に金融緩和が決定されるとの見方は依然として少数派にとどまっています。現時点での先物市場の利下げ予測も18%と低いです。その背景には、ドナルド・トランプ米大統領が6月7日にメキシコ製品への関税発動を「無期限延期」すると表明したことで、景気悪化リスクが一旦は和らいだという事情があるからでしょう。そのため、ダラス連銀のロバート・カプラン総裁のように「何らかの行動を決断するのは時期尚早」との慎重な意見も高官から上がっています。
利下げの判断を左右する重要なカギとなるのは、同年6月28日から29日にかけて大阪で開催される主要20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)です。トランプ大統領は、このサミットの場における中国の習近平国家主席との首脳会談で貿易交渉における一定の進展を期待されているものの、もし会談が不調に終われば、中国製品への追加制裁発動へ発展する可能性をはらんでいます。そうなれば、米国の景気に対する先行き不安が再び強まりかねません。そのため、先物市場では、G20の結果を踏まえた同年7月末のFOMCで、86%という非常に高い確率で利下げが決定されると予測されているのです。
景気拡大の現状と先行きの不安
足元の米国景気は、2019年7月で戦後最長となる拡大局面の11年目に突入することが確実視されています。同年1月から3月期の実質成長率(物価変動の影響を除いた経済成長の度合いを示す指標)は3.1%と底堅く推移し、同年4月の失業率も3.6%と、実に49年ぶりの低水準を保っている状況です。しかしながら、先行指標(数か月先の景気動向を予測する上で参考となる指標)には徐々に弱含みが見え始めています。特にFRBが重視している製造業の景況感指数(企業経営者などに現在の景気の良し悪しを尋ねたアンケート結果を指数化したもので、この数値が下がると景気の先行きに対する企業の警戒感が強まっていることを示す)は、同年5月に2年7カ月ぶりの低い水準まで低下してしまったのです。
このような状況を踏まえると、FRBが利下げに踏み切ることは、景気拡大の終焉を告げるのではなく、あくまで拡大を「長持ち」させるための**「予防的措置」**としての意味合いが強いと私は考えます。貿易戦争という外部要因による経済リスクが増大する中で、先行指標の悪化を放置すれば、景気後退へと繋がりかねません。SNS上でも、「FRBが動くのは賢明な判断」「リスクに先回りする姿勢は評価できる」といった意見が目立っており、金融緩和への期待感は高まっているようです。FRBが世界経済の安定に果たす役割は大きく、今後のFOMCでのメッセージングと、G20大阪サミットの結果が、世界的な金融市場の行方を大きく左右するでしょう。
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