現代社会において、私たちの生活に欠かせない存在となったSNS。しかし、その便利さの裏側で、巧妙に仕組まれた「偽情報」が世界を揺るがしています。2019年9月下旬に英国オックスフォード大学のインターネット研究所が発表した報告書によると、組織的な情報操作が確認された国は2年前の28カ国から70カ国へと急増しました。もはや一部の地域だけの問題ではなく、民主主義の根幹を脅かす地球規模の課題となっているのです。
SNSを利用したプロパガンダ(特定の思想へ誘導する宣伝)の手法は、主に3つに分類されます。1つ目は基本的人権の抑圧、2つ目は反対勢力の信用失墜、そして3つ目は反対意見の抹消です。権威主義的な体制下では、監視や検閲、さらには暴力を伴って情報がコントロールされることもあります。例えば香港のデモを巡り、デモ隊を過激派組織と同一視させるような投稿が拡散された例は、情報が武器として悪用される恐ろしさを物語っています。
日本も他人事ではない!ネット上での人権侵害と名誉毀損の実態
日本は前述の報告書で「情報操作国」には含まれていませんが、決して安心はできません。2019年8月には、あおり運転事件に関連して、全く無関係の女性経営者が同乗者と間違われ、実名で非難を浴びるという痛ましい事件が起きました。SNSでの不用意な「リツイート(他者の投稿を再拡散すること)」も名誉毀損に当たる可能性があると専門家は警告しています。悪意のない拡散が、誰かの人生を深く傷つけてしまうリスクを私たちは自覚すべきです。
法務省の調べによれば、2018年に起きたネット上の人権侵犯事件は1,910件に上ります。特に名誉毀損の件数は高水準が続いており、誰もが発信者になれる時代の危うさが浮き彫りになっています。SNSでの反響を見ても、「正義感からの投稿が実はデマだった」というケースへの恐怖を感じる声が多く、情報の真偽を見極める力、いわゆるメディアリテラシーの向上が、今まさに日本社会全体に求められているといえるでしょう。
信頼されるメディアへ。デジタルネイティブ世代に届ける真実の価値
こうした混迷を極めるネット空間を浄化するため、世界中で「ファクトチェック(情報の真偽検証)」の動きが加速しています。2018年には大手IT企業が「偽情報に関する行動規範」に署名し、不適切な広告や虚偽アカウントの排除に乗り出しました。しかし、システムによる排除だけでは不十分です。私たち既存の報道機関も、伝統的な取材で培った「情報の正確性」という武器を、紙の中だけに閉じ込めておくわけにはいきません。
新聞を手に取る機会が少ない若い世代に対し、彼らが日常的に利用するデジタル媒体を通じて、いかに信頼できる情報を届けるか。2019年9月18日、公正取引委員会の杉本委員長が語った「信頼される報じ手が報われる仕組み」の構築は、極めて重要な視点です。私自身、編集者として、単に「質の高い情報を出している」と自負するだけでなく、読者の皆様が偽情報に踊らされないための道標となるような、誠実な発信を続けていく決意です。
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