大手広告代理店の電通は、2019年における世界の広告市場の成長予測を下方修正したことを、2019年6月19日に発表いたしました。最新の見通しによりますと、市場規模は前年比3.6%増の6,099億ドル(日本円で約66兆円)となる見込みです。これは、今年1月に示された従来の予測から増加率が0.2ポイント引き下げられたことになります。世界市場全体の成長は、主にインターネット広告によって引き続き牽引されるものの、アメリカ合衆国と中華人民共和国の間で激化する貿易摩擦など、世界的な景気の先行きに対する警戒感が広がりつつあることが、この下方修正の背景にあると言えるでしょう。
地域別の予測では、特にアジア地域の成長率が従来の4.5%増から4.0%増へと引き下げられた点が注目されます。これは、この地域における最大の市場の一つである中国の予測が、従来の7.0%増から5.4%増へと大きく修正されたことが影響しているためです。ヨーロッパでも、西ヨーロッパと中央・東ヨーロッパの両地域で下方修正が見られました。一方で、北米とラテンアメリカについては上方修正されており、地域によって景況感や市場の勢いに違いが出ていることがわかります。
このような世界的な市場成長の鈍化傾向に対し、インターネット上では様々な反響が見受けられました。「米中貿易摩擦の影響が、こんなところにも出てきているのか」「デジタル広告は伸び続けているけど、そろそろピークアウトするのでは?」といった、世界経済の動向を懸念する声や、デジタル広告の持続的な成長に対する疑問の声も上がっていました。その一方で、「日本の状況はどうなるのか?」と、国内市場に関心を示す声も多く、関心度の高さがうかがえます。
さて、日本の広告市場に目を向けますと、電通の予測では前年比1.2%増となる見通しで、これは従来の0.6%増という予測から上方修正されているのです。世界市場の成長率が引き下げられるなかでの上方修正は、日本の市場の底力を示すものと言えるでしょう。特に成長を牽引しているのが、モバイル向けの広告と動画広告を含むネット広告です。モバイル向け広告は21.2%増、動画広告は29.2%増と、それぞれ高い伸び率を示す見込みとなっており、デジタル広告への需要が加速度的に高まっていることがわかります。
媒体別の成長率を見てみますと、世界市場全体ではデジタル広告が最も大きく11.5%増となりますが、こちらも従来の予測に比べると0.5ポイント引き下げられました。一方、テレビ、新聞、雑誌、ラジオのマス4媒体(多くの人々に情報を伝達する、従来の主要メディア)のうち、テレビ広告は従来の0.5%増という予測から一転して0.1%減のマイナス成長となる見込みです。これは、消費者の情報接触行動が、従来のテレビ視聴や紙媒体から、スマートフォンなどを活用したインターネットへとシフトしている現状を、如実に示していると言えるでしょう。
私の意見としては、世界経済の不透明感が高まる中でも、日本市場が上方修正されたことは非常に明るい兆しだと考えます。特に、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、企業によるプロモーション活動が増える見通しであることも、市場を後押しする大きな要因となりそうです。この成長の鍵は、やはりネット広告、特にモバイルや動画といった高成長分野が握っていることは間違いありません。企業は、従来の広告手法だけに頼るのではなく、デジタル分野における新たな消費者の接点(カスタマージャーニー)を深く理解し、よりパーソナライズされた(個人に合わせた)広告戦略を構築することが、今後の市場で勝ち残るための必須条件となるでしょう。
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