写真フィルムで培った高度な技術を化粧品へと応用し、またたく間に人気ブランドへと成長した富士フイルムの「アスタリフト」。その快進撃を現場で支えているのが、富士フイルムヘルスケアラボラトリーの近野史子さんです。彼女が率いるチームが担当する小売店の上位10軒では、2018年秋の売上高が前年同期比で2倍という驚異的な数字を叩き出しました。
近野さんの営業スタイルは、単に商品を卸すだけではありません。自ら店舗に足を運び、現場のスタッフが何を求めているのかを丁寧に汲み取る「現場主義」を貫いています。SNSなどでは「アスタリフトの店員さんは知識が豊富」という声も聞かれますが、その裏側には近野さんによる、売り手のやる気を引き出す緻密なコミュニケーション戦略があるのです。
「伝わらなければ意味がない」実演が変える現場の熱量
近野さんが何よりも大切にしているのは、商品の凄さを「自分ごと」として感じてもらうことです。かつて客として店舗を訪れた際、自社製品の魅力を十分に説明してもらえなかった苦い経験から、彼女は販売員向けの勉強会を自ら企画しました。そこでは、単なる座学ではなく、日焼け止めの効果を紫外線ライトで可視化するなどの「実演」が重視されています。
専門用語で「デモンストレーション」とも呼ばれるこの手法は、言葉だけでは伝わりにくい技術力を直感的に理解させる力を持っています。いくら富士フイルムが誇る「ナノテクノロジー(物質を原子・分子レベルの極微細なサイズで制御する技術)」が優れていても、現場で語られなければお客様には届きません。彼女は「分かりやすさ」を武器に、販売員の意識を劇的に変えました。
相手によって接し方を変える柔軟さも彼女の強みです。本部の責任者にはデータを用いた論理的なプレゼンテーションを行う一方で、店舗の担当者には「娘」や「姉」のような親しみやすさで寄り添います。こうした相手の立場に立った「アダプティブ(適応的)」な対話こそが、信頼関係を築き、店舗全体を「アスタリフト推し」にする秘訣と言えるでしょう。
研究所招待でブランドの「信者」を作る画期的な施策
2019年10月14日現在、近野さんの取り組みはさらに進化を遂げています。販売コンテストで実績を上げた店舗の担当者を、通常は門外不出である富士フイルムの研究所へと招待したのです。最先端の設備を目の当たりにし、開発者の情熱に直接触れる体験は、販売員にとって何物にも代えがたい「誇り」へとつながりました。
ネット通販が普及する現代においても、実際に商品を手に取れる店舗の価値は計り知れません。トレンドに敏感な女性客の心を掴むには、発売の瞬間にいかに店頭で大きく展開してもらえるかが勝負。近野さんのように、情熱を持って「ファン」を増やせる営業職の存在こそが、ブランドの未来を左右する最強のエンジンになると私は確信しています。
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