【千曲川決壊の教訓】信州大・吉谷教授が語る治水の鉄則と命を守る「避難の重要性」

2019年10月13日の未明、記録的な豪雨により長野市内を流れる千曲川の堤防が決壊し、甚大な浸水被害が発生しました。この未曾有の事態を受け、国が設置した「千曲川堤防調査委員会」の委員を務める信州大学工学部の吉谷純一教授は、現在の治水状況について警鐘を鳴らしています。SNS上でも「なぜ防げなかったのか」「これからの対策はどうなるのか」といった不安の声が渦巻いており、専門家の知見に基づいた正確な情報の理解が求められています。

吉谷教授によれば、堤防から水が溢れ出す「越水」が発生した場合、いつ破堤してもおかしくない極めて危険な状態に陥ります。現在の堤防設計は、過去のデータを分析して「100年に1度」クラスの大雨による水位を想定していますが、それを超える事態には構造上の限界があるのです。一度水が溢れれば、持ちこたえられるのは長くても数時間程度でしょう。越水に耐えうる「スーパー堤防」の建設には膨大なコストがかかるため、現実的には非常に困難な課題と言えます。

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治水の鉄則は「下流から」!上流対策を急げない理由とは

川の安全性を高めるには、実は厳格な順番が存在することをご存知でしょうか。吉谷教授は「下流の安全を確保した上で、上流の対策を行うのが鉄則」だと指摘します。もし下流の整備が終わらないうちに上流の堤防を高くしたり川幅を広げたりすれば、下流に流れ込む水量が増えてしまい、さらに危険な状況を招きかねません。信濃川水系でもこの優先順位に基づき、国が地域間の対立を防ぎながら慎重に工事の計画を立てているのが実情なのです。

一方で、千曲川には大町ダム以外に大規模な貯水施設がなく、既存ダムの機能を強化する手法も現実的ではありません。また、一時的に水を溜めて洪水被害を軽減する「遊水池」も不足しており、現行の整備計画をいかに迅速に進めるかが鍵となります。しかし、整備が進んだとしても想定を上回る雨が降れば、氾濫を完全に防ぐことは不可能です。私たちは「堤防があるから絶対安心」という意識を捨て、ハザードマップを確認するなどの主体的な備えが不可欠でしょう。

編集部が考える「これからの防災」のあり方

今回の吉谷教授の解説から痛感するのは、インフラによる「公助」には物理的な限界があるという厳しい現実です。2019年10月29日現在、復旧作業が続く中で私たちが学ぶべきは、行政の対策を待つだけでなく「自分の命は自分で守る」という自助の精神ではないでしょうか。治水工事には長い年月を要します。だからこそ、危険が迫った際に迷わず避難を選択できるよう、日頃から家族や地域で避難ルートを共有しておくことが、最も確実な防災対策となります。

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