2019年10月に迫った消費増税に向け、飲食店の持ち帰り(テイクアウト)商品をスマートフォンで事前に注文し、決済まで完了できるアプリサービスが急速に広がりを見せています。特に、軽減税率制度が導入されることにより、飲食店の「持ち帰り」は税率が8パーセントに据え置かれるため、各社はこの大きな商機を逃すまいと、利用客の囲い込みを激化させている模様です。
この流れの中で、TAPGO(本社:東京都新宿区)は、スマホアプリ「menu(メニュー)」の配信を開始しました。現在は、会社員の昼食需要を見込んだ、東京メトロ日比谷駅周辺の約300店舗でサービスが利用できますが、2019年10月までには東京23区内全域にサービス提供エリアを拡大し、使える店舗数を現在の4倍強にあたる1000店舗まで増やす計画とのことです。特に夕食での利用拡大も視野に入れていると言えるでしょう。
アプリの利用者は、店舗・注文する商品・トッピングなどを選ぶほか、持ち帰る時間を10分単位で細かく指定することが可能です。そして、事前に登録したクレジットカードで決済を済ませるシステムとなっており、注文時に決済が完了するため、飲食店側はキャンセルによる損害を受ける心配がないという点が大きなメリットです。TAPGOは、「menu」経由の売り上げから手数料として10パーセントを受け取ります。また、店舗にはカード会社への手数料が別途発生する仕組みです。さらに、注文確認用のタブレット端末の貸し出しや、アプリ掲載用の写真撮影といった付加サービスも有償で提供しており、店舗側のテイクアウト導入を強力に後押ししています。
「menu」事業責任者の佐藤裕一氏は、10月の消費増税をきっかけに、個人経営の店舗や中規模チェーンもテイクアウトへの対応を始めると予測されており、「アプリを活用した集客を試したい店」を積極的に取り込む姿勢を示しています。同様の事前注文アプリとしては、DIRIGIO(本社:東京都港区)が提供する「ピックス」が、すでに都内で約250店舗に導入されており、こちらも2020年までには1000店舗への拡大を目指している状況です。
大手の動きも活発化しています。LINE(ライン)は2019年4月に、対話アプリ内で使えるテイクアウト注文・決済サービス「LINEポケオ」をスタートさせました。今後は、同社の決済サービスである「LINEペイ」などでの支払いにも対応していく計画です。現在は、すかいらーくホールディングス系列の約2000店舗などで利用可能となっており、すでに2019年6月には、松屋のプレミアム牛丼やガストのマヨコーンピザが100円になるという破格のキャンペーンを実施したところ、想定を大幅に上回る反響があり、わずか1日で終了する事態となりました。この反響は、消費者がテイクアウトサービスの利便性や価格優位性にいかに注目しているかを示す、明確な証拠だと言えるでしょう。
また、米ウーバーテクノロジーズなどによる宅配代行サービスも利用者が増加傾向にあります。これらテイクアウト・デリバリーサービスは、昼休みや仕事帰りに飲食店で商品を持ち帰るという文化を根付かせ、現在の10兆円規模と言われる中食市場をさらに押し上げる可能性を秘めています。(※中食市場:調理済みの食品を購入して家庭などで食べる食事形態を指します。外食と内食の中間に位置するため「中食」と呼ばれます。)
テイクアウト市場の拡大は消費者・飲食店双方にメリットをもたらすでしょう
軽減税率の導入は、日本の食文化と商習慣に大きな変革をもたらすでしょう。私が編集者として注目したいのは、これらのアプリが消費者だけでなく、飲食店側にもたらすメリットです。消費者は、待ち時間なくスムーズに商品を受け取ることができ、事前の決済でレジでの手間も省けます。一方、飲食店は、アプリが集客装置として機能することで、新たな顧客層を取り込めます。さらに、事前注文・決済の仕組みは、注文を受けるタイミングで売上が確定するため、無断キャンセル(ノーショー)のリスクを低減できる点も、経営安定化に大きく寄与するはずです。これは、人手不足が深刻化する飲食業界にとって、非常に価値のある取り組みだと考えられます。
「menu」や「ピックス」、「LINEポケオ」といった多様なサービスが競争し、技術的な進化や利便性の向上が進むことは、最終的に利用者である私たち消費者の利便性を高めます。テイクアウトという文化が、生活の一部としてより根付くことで、忙しい現代人の食生活を豊かにし、同時に外食産業の新たな収益の柱として成長することを強く期待しています。これからの数年間で、私たちの食卓と、街の飲食店の姿は大きく変わっていくことでしょう。
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