川崎重工業のグループに属する日本飛行機(横浜市)は、世界の空を飛び交う米ボーイング社の旅客機や、日本の安全保障を担う自衛隊機などの重要な部品製造を担う、国内航空機産業の大手サプライヤーの一角を占めています。同社は三菱重工業や親会社である川重とともに、この分野で重要な役割を果たしており、単に航空機の部品を作るだけでなく、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による小惑星探査機**「はやぶさ2」のプロジェクトにも機器製造で参加し、その高い技術力を証明していると言えるでしょう。世界規模の航空会社や最先端の宇宙開発を陰で支える、その確かな技術力とものづくりへの情熱に注目すべきです。
現代の航空機製造において欠かせない素材が、炭素繊維複合素材(CFRP)です。これは、炭素の繊維をプラスチックなどの樹脂で固めた複合材料で、軽量でありながら非常に強度が高いという特性を持ち、機体の燃費向上や性能向上に大きく貢献しています。日本飛行機の現場では、外部と厳密に隔離されたクリーンな環境で、職人がフィルム状のカーボンファイバーを何層にもわたり丁寧に手作業で重ねていくのです。その後、直径が4メートル以上もある巨大な筒状の大型硬化炉、専門用語でオートクレーブと呼ばれる装置の中で、高温高圧をかけて成型されるという、極めて高度な製造工程を経て製品は完成します。この繊細かつ大胆な技術こそが、同社の基盤を築いていると言っても過言ではありません。
日本飛行機は、旧日本海軍の航空機製造を目的として1934年(昭和9年)に創業された、長い歴史を持つ企業です。主力の横浜工場(横浜市)では、ボーイング社の象徴的な機体である「747」のフラップ**(翼の後縁部にあり、離着陸時に揚力を高める補助翼)や胴体フレーム、また「777」の主翼内部にあるインスパーリブ(主翼の構造を支える骨組み)といった重要な部品を手がけており、さらに防衛・宇宙関連の自衛隊機などの製造も担当しています。設計・開発の技術者も多数在籍しているため、新型機の開発段階から参画できる技術開発力の高さも大きな強みとなっています。
また、米軍と海上自衛隊の厚木基地に隣接する厚木工場(神奈川県大和市)では、日米両国の航空機の整備を担っています。小島俊文社長が語るように、部品の製造と整備の両方を手がける企業は世界的にも珍しい存在なのです。この両輪を担うことで、製造された部品が実際に航空機の中でどのような役割を果たし、どのような状況で稼働しているのかを肌で感じられるという大きな利点があるでしょう。こうした現場からのフィードバックは、製品の品質向上や設計の改善に直結し、技術と経験をより一層深めることに役立っているに違いありません。
「はやぶさ2」を支えたミクロン単位の精度
同社は2018年(平成30年)に生産関連部門を生産本部として一本化し、部署間の人事交流を促進することで、航空機に関する専門知識や技術への造詣をさらに深められるような組織体制を構築しました。しかし近年は、低価格を武器にした海外の部品メーカーが台頭してきており、事業環境は厳しさを増している状況です。このような状況の中、小島社長は「日本人の器用さや経験の多さが出る部分での勝負」が重要だと強調されています。実際に、同社は2017年(平成29年)に、ボーイング社が世界の調達メーカーを表彰する**「2016年サプライヤー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しており、製品改良への協力体制などが高く評価されています。これは、厳しい競争環境の中で、同社の技術と品質に対する信頼が揺るぎないものであることの証左と言えるでしょう。
そして、日本の技術の粋を集めた宇宙探査機「はやぶさ2」のプロジェクトにおいて、日本飛行機は極めて重要な役割を果たしました。小惑星「リュウグウ」に人工クレーターを作るための衝突装置を、探査機本体から正確に分離させるための機構、ヘリカルスプリングを担当したのです。ヘリカルスプリングとは、円筒形に巻かれたバネのことで、ここでは衝突装置に余分な傾きを与えず、まっすぐかつ正確に装置を切り離すための精密な機構として機能します。また、装置に自転の動き(回転力)を与えて姿勢を安定させる役割も担い、狙った場所へのより正確な到達を可能にする非常に重要な役割を担っていたようです。小島社長は、この装置が無事に稼働した時には、さすがに安堵したと語られています。
このプロジェクトが成功裡に進む中、SNSなどでは衝突装置の分離や運用に関する話題が多く、「ミクロン単位の精度が要求される技術」**が日本のものづくりを支えているという声や、「日本の下請け企業の技術が宇宙を拓いている」といった、裏方で貢献した企業の技術力への高い関心が寄せられていました。私たちの生活に身近な航空機はもちろんのこと、一度の失敗も許されない宇宙探査機という極限のプロジェクトに挑戦し続けることで、同社の技術力や品質はさらに磨き上げられているのではないでしょうか。航空機や宇宙開発を支える日本飛行機の飽くなき挑戦は、これからも世界中の空と、さらにその先の宇宙へと続いていくに違いありません。
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