人工知能(AI)の画像認識技術において世界的に有力な香港の企業、センスタイム(SenseTime)が、自動車の自動運転を実現するための核心技術の一つを、2021年までに世界の大手自動車メーカーおよそ20社に提供する計画を明らかにしました。これはAI分野における中国企業の存在感が、国際的に急速に高まっていることを示す、非常に重要な動きだと考えられます。
日本経済新聞の取材に応じた史軍(ジェフ・シ)副総裁によりますと、今回提供されるのは車内監視システムです。このシステムは、カメラを通じて運転手の表情や姿勢などを精緻に解析し、居眠りや脇見運転の兆候を検知した場合に、警告音などを発して知らせる仕組みになっています。これは、完全な自動運転が実現するまでの間、緊急時に運転手がブレーキなどの操作を補助する必要があるため、安全性を大幅に高めるための基幹技術となるでしょう。
史副総裁は、車内監視システムについて「米国、ドイツ、日本、中国の大手自動車メーカー約20社とすでに契約を締結している」と発言しています。具体的には、2019年中にまず2社へ、そして2021年までに残りの企業へ製品の供給を開始する見通しです。中国国内においては、電気自動車(EV)の新興メーカーである威馬汽車(WEMotor、上海市)への供給を2018年に発表しており、着実に実績を積み重ねています。
この分野でAIを活用したシステムは、トヨタ自動車系列のアイシン精機なども開発を進めていますが、史副総裁は「技術的な参入障壁が非常に高いため、競合が少なく、将来性が非常に明るい市場だ」と自信を見せています。センスタイムは、AIで画像の変化を精密に読み取る、非常に高度なノウハウを有しているからです。実際、2017年から同社と共同実験を行っているホンダも、その「動く物を認識する技術力の高さ」を高く評価しているとのことで、その技術力には疑いの余地はないでしょう。
SNSなどでの反響を見てみると、「自動運転の安全性を高める上で非常に期待できる」「AI技術で中国が世界をリードするのか」といった声が多く見受けられます。特に、人間の注意力に頼る部分をAIがサポートすることで、交通事故を減らすことへの期待は非常に大きいと言えるでしょう。私個人としても、この技術は単なる自動運転の補助ではなく、自動車という移動手段の安全基準そのものを向上させるための不可欠な要素だと強く感じています。技術の進歩は、私たちの生活の安心にも直結するものです。
現在、センスタイムの売上高はおよそ8割が中国国内で占められていますが、史副総裁は東南アジアでの事業拡大方針も示しており、グローバルな展開を加速させています。その一つとして、2019年4月に発表された、およそ10億ドル(当時の為替レートで約1,100億円)を投じてマレーシアにAI関連企業を集積させる工業団地を建設する計画があります。この候補地はクアラルンプール近郊の都市になる見込みだとのことです。また、タイからも道路の渋滞状況を分析する事業の要望が寄せられているなど、その事業領域は広がりを見せています。
センスタイムは2014年の創業以来、監視カメラや顔認証システムなどにも画像認識技術を提供し、急成長を遂げてきました。企業の評価額は45億ドル(約5,000億円)を超えると見られており、米国の調査会社CBインサイツによれば、企業価値が10億ドルを超える非上場の新興企業、いわゆるユニコーンの中でも中国のAI分野で最大規模だそうです。AI分野の博士号を持つ従業員を150人以上も抱えているという点からも、同社が技術開発にいかに力を入れているかが理解できます。この強力な技術基盤と積極的な国際展開によって、センスタイムは今後、世界のAIおよび自動運転市場において、さらに重要な役割を担っていくこととなるでしょう。
コメント