2019年6月20日現在、フィリピンの外資誘致を担う経済区庁(PEZA:ペザ)で、プラザ長官の交代説が急浮上し、国内外で大きな波紋を呼んでいます。この背景には、ドゥテルテ政権が推進する税制改革を巡る、上層部との激しい対立が存在します。政権が目指すのは、PEZAが管轄する外資優遇特区における税制優遇の撤廃であり、同制度の維持を強く求めるプラザ氏は、政権側からすれば「目障りな存在」と映っているのでしょう。ドゥテルテ政権が人事という強権的な手段に出るのか、外資企業は今後の動向に戦々恐々としています。
実際、プラザ氏は5月下旬、地元紙に対して「私が職を失うとの噂を耳にした」と語り、更迭される可能性を事実上認める見解を示しました。この時期、比貿易産業省のウェブサイトには「長官が数週間以内に交代する」という発表文が一時掲載されたものの、わずか2日後には削除されるという不可解な動きも見られました。この経緯や理由の詳細は不明ですが、長官交代説が単なる噂ではないことを示唆しています。この動きはSNSでも大きな反響を呼び、特にフィリピン国内のビジネス関係者や外資系企業の間では、「投資環境が悪化するのではないか」という懸念の声が広がっています。
PEZAは1995年に制定された経済特区法に基づいて設立された機関で、特区内の企業に対して手厚い税制優遇措置を設けることで、3,000社以上の輸出向け製造業を誘致し、フィリピンの産業育成に大きく貢献してきました。具体的には、認定企業は4~6年間の法人税(30%)が免除され、その後も5%という低税率が適用されるのです。しかし、政府側は、こうした優遇が一部の外資大手企業にばかり恩恵をもたらしているのは不公平であると主張し、優遇措置を全面的に撤廃する意向を固めています。その代わりに、法人税率を25%に引き下げ、より幅広い産業からの投資を促す方針を掲げています。
政府は当初、2018年中の法改正を目指していましたが、議会で結論が出ずに持ち越されていました。しかし、優遇措置を当て込んでフィリピンに進出した外資企業からの反発は非常に強く、日米欧などの商工会議所は連名で意見書を提出。「一定の税率引き上げは容認するものの、優遇制度そのものを撤廃すれば、外資はフィリピンへの投資を止めてしまう」と強く訴えてきました。この企業側の主張に同調し、制度の維持を強く求めてきたのがプラザ氏だったわけです。
私が編集者としてこの状況を見るに、プラザ氏が上層部との対立も辞さない姿勢を貫くのは、優遇撤廃がフィリピン経済にもたらす影響の深刻さを理解しているからに他なりません。実際、PEZAへの投資はすでに陰りを見せ始めており、2019年1月~4月における投資認可額は294億ペソ(約610億円)と、前年同期比で25%もの大幅な減少となりました。しかし、ドゥテルテ大統領の右腕とされるドミンゲス財務相は「優遇を求める企業が減っただけで、法人税全体が下がれば投資総額は増える」と強気の姿勢を崩さず、企業側やプラザ氏の訴えを完全に一蹴しています。
🇵🇭中間選挙勝利で加速する政権の強気な税制改革
2019年5月の中間選挙でドゥテルテ政権が勝利し、議会内での影響力をさらに強めたことは、この税制改革を推進する上で大きな追い風となっています。政権側が抵抗勢力と見なすプラザ氏を交代させる可能性は、もはや否定できない情勢です。仮に、外資優遇の制度撤廃が現実のものとなれば、これまでの製造・輸出拠点としてのフィリピンの魅力は大きく薄れてしまうとの見方が多く、日本企業を含む外資企業は、今後の投資戦略の見直しを迫られるのは必至でしょう。
税制優遇は、新興国が海外から直接投資を呼び込み、国内の雇用創出や技術移転を促すための重要な**インセンティブ(誘因)**です。一律的な税率引き下げが、本当に優遇特区の魅力を代替できるのかどうかは、非常に懐疑的にならざるを得ません。フィリピン政府は、目先の税収増だけでなく、長期的な国際競争力と安定した投資環境の維持という観点から、慎重な判断が求められます。
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