近年、革新的な技術やサービスを持つスタートアップ企業と、巨大な資本力や販路を持つ大企業との連携、すなわち「オープンイノベーション」の動きが、日本の経済成長の鍵として注目を集めています。特に有望なスタートアップにとって、事業を飛躍的に拡大させるために、どの企業と手を組むかは極めて重要な選択です。では、スタートアップ側から見て、最も連携に積極的で、実際に高い評価を得ている大企業は一体どこなのでしょうか。
この問いに答えるべく、経済産業省と「イノベーションリーダーズサミット」実行委員会は共同で、「イノベーティブ大企業ランキング」調査を2019年5月に実施いたしました。これは、スタートアップ約1,000社を対象に、「スタートアップとの連携を通じたオープンイノベーションに積極的な大企業」を5社まで連記方式で尋ねたもので、483社から有効な回答を得ています。この調査は2018年に続き2回目となります。
調査の結果、堂々の1位に輝いたのはKDDIでした。同社は、前回の調査に続き、2年連続での首位獲得となります。KDDIの人気の秘訣は、単なる資金提供に留まらない、事業面での積極的な連携と実行力の高さにあると評価されているようです。具体的には、「コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)」という、自社の戦略的利益のためにスタートアップに出資する組織を持ち、これまで60件を超える事業連携を実現してきました。特に2019年は、次世代通信規格である「5G」の本格的な普及を見据え、自社だけでなく異業種の巨大企業まで巻き込んだ協業プログラムを展開している点も、スタートアップにとって魅力的に映っているのでしょう。
2位には前回3位だったソフトバンクグループがランクインしました。同社は、サウジアラビアの政府系ファンドなどと共同で組成した約10兆円規模の巨大ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を通じ、海外のスタートアップ投資において圧倒的な存在感を示しています。この巨大な投資規模だけでなく、「契約を含め動きが速い」といった、機動的でスピーディーな意思決定プロセスと実行力が、特にヘルスケア系のスタートアップなどから高く評価されている点が、順位上昇の要因と考えられます。
続く3位は前回2位のトヨタ自動車でした。自動車業界の巨人である同社は、主にAI(人工知能)や自動運転といった、未来のモビリティ社会を形作る最先端分野で、スタートアップとの連携を精力的に進めています。特筆すべきは、2017年に米シリコンバレーにCVCである「トヨタAIベンチャーズ」を設立し、グローバルな視点でのオープンイノベーションを推進していることです。また、前回36位から一気に7位へと躍進したのがJR東日本です。同社は、2017年からスタートアップ支援プログラムを開始し、さらに2018年にはCVCであるJR東日本スタートアップを設立するなど、本気でスタートアップとの連携に取り組む姿勢が明確になり、それが評価に繋がったと言えるでしょう。
今回の結果を拝見し、筆者としては、単に資金を提供する「投資家」としてではなく、実際に事業を共に作り上げる「共創パートナー」としてスタートアップと向き合える大企業が、今後はより一層、選ばれる存在になるだろうと感じています。特に、5GやAIといった新たな技術革新が目前に迫る中、大企業が持つ安定した基盤とスタートアップが持つ尖ったアイデアやスピード感が融合することで、これまでにない価値創造が生まれることに期待せずにはいられません。
業界別の評価で見る、大企業の連携戦略
また、この調査ではスタートアップの業界別で、連携先として最も評価された大企業についても触れられています。例えば、医療分野では富士フイルム、金融と技術を融合させたフィンテックやセキュリティ分野では三菱UFJ銀行、化学や素材分野では三井化学、そしてエネルギーや蓄電池分野では関西電力がそれぞれトップに立っています。これらの結果は、各業界のリーディングカンパニーが、自社の事業ドメインと関連性の高い分野で、積極的にオープンイノベーションを戦略的に展開している様子を明確に示していると言えるでしょう。
インターネット上の反響としては、特にKDDIが2年連続で1位となったことに対し、「KDDIのCVCは、出資後の連携サポートが手厚いと聞く」「ソフトバンクのファンドのスピード感は圧倒的」といった、具体的な連携時の評価に言及する声が多く見受けられました。また、JR東日本の急上昇についても、「既存事業の枠を超えようとする本気度が伝わってくる」といった、変革への意欲を評価する意見が目立ちます。こうしたスタートアップからの熱い視線は、大企業にとってイノベーションの源泉となるだけでなく、自社の企業文化や体制を変革する大きなチャンスとなるに違いありません。
今回の調査から、スタートアップが大企業を選ぶ基準は、資金力だけでなく、「実行力」「スピード」、そして「事業共創への本気度」であると強く感じられます。今後、この「オープンイノベーション」という波はますます強まり、有望なスタートアップと積極的な大企業が手を組むことで、日本発のイノベーションが次々と生まれることに期待が高まります。
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