超高齢社会の進展に伴い、認知症の予防と患者さまへの手厚いケアは、今や社会全体の重要課題です。厚生労働省の推計によりますと、国内の65歳以上の認知症高齢者は2012年時点で462万人に上り、高齢者全体の約15パーセントを占めています。さらに、2060年には高齢者の約3人に1人、実に1,154万人が認知症を患うと予測されており、その需要は計り知れません。こうした背景のもと、介護業界や不動産業界の大手企業が、認知症に関する専門的な知見を取り入れ、事業開発を加速させている状況に注目が集まっているのです。
私見ですが、この動きは単なるビジネスチャンスの追求にとどまらず、社会的責任を果たす「未来への投資」であると感じています。認知症とは、記憶力や判断力の低下だけでなく、時には妄想や暴力といった周辺症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)を伴うこともあり、患者さまご本人だけでなく、ご家族の負担も非常に重いのが現状です。だからこそ、企業が提供するサービスが、その困難を和らげる「光」となることを強く期待したいものです。
世界的な研究者と連携を強化する損保ジャパン日本興亜ひまわり生命
SOMPOホールディングス(SOMPO HD)は、認知症関連事業を大幅に拡充しています。同社は、スウェーデンの名門・カロリンスカ研究所で認知症と生活習慣の関係を研究されているミーア・キビペルト教授と、アドバイザリー契約を締結されました。カロリンスカ研究所は、ノーベル生理学・医学賞の選考を行うことでも世界的に知られる、生命科学研究の最高峰です。この専門家の知見を取り入れることで、SOMPO HDは、介護関連の商品やサービスの開発を飛躍的に加速させる方針でしょう。
傘下のSOMPOケア(東京・品川)は、約2万人の入居者さまの食事データを分析し、それを認知症の予防やケアの向上に役立てる取り組みを進めているそうです。また、保険分野では、子会社の損保ジャパン日本興亜ひまわり生命(東京・新宿)が認知症関連の保険商品を展開し、2018年には、加入者さまを対象とした「SOMPO笑顔倶楽部」を発足させました。この倶楽部では、認知機能のチェックや機能低下の予防を中心とした介護情報サービスを提供しており、保険の枠を超えた包括的なサポート体制が構築されていると言えるでしょう。
SOMPOケアの2019年3月期の売上高は1,241億円となっており、介護保険外の収益源を広げることが今後の重要な課題とされています。長期的な需要が見込める健康・ヘルスケア分野、特に認知症関連サービスを伸ばすことで、早期に1,500億円規模への売上高引き上げを目指している状況です。このような大手企業の積極的な動きは、SNS上でも「保険だけじゃなく、具体的なサービスまでやってくれるのは心強い」「介護の質が上がりそうで期待できる」といった好意的な反響が見受けられ、関心の高さがうかがえます。
高齢者住宅に「認知症フレンドリー」なデザインを導入する東急不動産
不動産大手の東急不動産も、認知症患者さまが暮らしやすい住環境の整備に力を注いでいます。同社は、英国のスターリング大学と提携し、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」などで、認知症患者さまが過ごしやすいデザインや内装の導入を進めているのです。サ高住とは、バリアフリー構造を持ち、安否確認や生活相談サービスが付いた高齢者向けの賃貸住宅を指します。
2019年4月に開業したサ高住の「クレールレジデンス横浜十日市場」(横浜市)では、入居者さまが廊下を歩く方向によって異なる色が見えるような設計が採用されました。これは、部屋を出た後に進む方向が分からなくなりがちな認知症の入居者さまへの配慮から生まれた工夫です。さらに、部屋の前に小物などを置けるスペースを設けることで、ご自身の部屋を容易に認識できるようにしています。このような建築学的な工夫は、患者さまの不安を軽減し、自立した生活を支援する上で極めて有効なアプローチになるでしょう。
学研HDなど他企業の認知症ケアへの取り組み
介護企業では、学研ホールディングスも積極的に動いています。2018年に、認知症介護に強みを持つグループホーム大手のメディカル・ケア・サービス(さいたま市)を買収されました。グループホームとは、認知症の方が専門スタッフのサポートを受けながら、共同生活を送る住居のことです。また、同社は島津製作所や島根大学などと連携し、認知機能に関する共同研究も開始されており、異業種・異分野の力を結集した取り組みが活発化しています。
このように、各社が認知症を「単なる病気」として捉えるのではなく、「生活の質(QOL:Quality of Life)」を維持するための総合的なサポートが必要な領域として認識し、研究やサービス開発を急いでいる状況は大変喜ばしいことです。認知症高齢者の増加が見込まれる中、予防から日々の生活支援まで、手厚いケアのニーズは一層高まることが予想されます。この企業の熱意と工夫が、今後の超高齢社会を支える柱となることを、私たちは期待して見守りたいと思います。
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