近年、インターネット通販市場の急拡大に伴い、物流倉庫とそこで行われる業務は爆発的に増加しています。しかしながら、その裏側で労災が深刻な社会問題として顕在化しているのが現状でしょう。厚生労働省の統計によりますと、2017年のフォークリフトによる労災件数は1,997件に上り、これは2015年と比較して6%も増加しているのです。特に、荷役運搬機械における労災の実に7割をフォークリフトが占めており、クレーン(24%)など他の機械と比べてもその割合は圧倒的に多いと言えます。高齢化と人手不足が進行する物流現場の負荷は増すばかりであり、技術による省力化は進んでいるものの、フォークリフトのような人手に頼らざるを得ない部分が多く、人間のすぐ近くで作業するため、労災や事故が発生しやすい構造的な問題を抱えているのです。
このような背景のもと、三井物産エレクトロニクス(MBEL)がフォークリフトの運用状況を徹底的に「見える化」するサービス「フォーカーズ」を強化し、注目を集めています。このサービスは、フォークリフトにカメラやセンサー、アンテナなどを後付けし、得られた動画や走行情報をクラウド経由で遠隔監視するという画期的なものです。アナログになりがちだった荷役の現場を、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術でデジタル化し、安全性の向上と効率的な維持管理の両立を目指しています。2017年のサービス開始以来、ヤマトロジスティクスや日立物流といった国内の主要な20社が既に導入しており、その効果に大きな期待が寄せられているのでしょう。
フォーカーズが提供する核となる機能の一つは、危険運転の監視です。急発進や急旋回といった危険な運転操作をセンサーが検知すると、その前後10秒間の動画データが瞬時にクラウドへ送られます。これにより、本社などの遠隔地からでも、現場の誰が、どのような運転を行っているかを正確に把握することが可能です。運転手側にも「見られている」という意識が強く働き、結果として安全運転を励行させる効果が期待できます。実際にこのシステムを導入した企業からは、「事故の未然防止に役立っている」「現場の安全意識が向上した」といった、SNSでも多くの共感の声が上がっており、特に「見られてる意識が安全に繋がるのは納得」といった肯定的な意見が散見されます。
さらにMBELは、2020年春からはメンテナンス情報の提供という新たなサービスを追加する計画です。これまでは経験や勘に頼って行われがちだったフォークリフトの維持管理ですが、フォーカーズでは走行時間の記録に加え、センサーでバッテリーの劣化具合やバッテリー液の残量を常時モニタリングします。これにより、適切な交換や補充のタイミングを正確に知ることが可能となるでしょう。適切な維持管理が行えないと、車両の寿命が短くなってしまうリスクがありましたが、この新サービスによってその問題が解消される見込みです。基本料金に加えて、クラウド利用料や維持管理サービス利用料が別途必要となりますが、MBELは新サービスの導入を機に営業活動を強化し、現在の20社から5倍にあたる100社への導入を目指すとのことです。
私自身の見解としては、このMBELの「フォーカーズ」は、まさに現代の物流現場が抱える構造的な課題を解決しうる、極めて重要なソリューションだと考えます。IoT技術を活用して、人間が介在する部分の安全性と効率性を高めることは、人手不足が深刻化する日本において喫緊の課題です。危険運転の可視化は、直接的な事故の減少に繋がりますし、適切な車両メンテナンスは、稼働率の向上とコスト削減に貢献するでしょう。この取り組みが、日本の物流業界全体の安全基準を引き上げ、労働環境の改善に大きく寄与することを期待しています。
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