政府と与党は2019年11月25日、働いて一定以上の収入を得ている高齢者の年金支給額をカットする「在職老齢年金制度」について、新たな方針を固めました。現在、65歳以上の方に適用されている月収「47万円超」という基準については、現状を維持する方向で決着する見通しです。一方で、60歳から64歳の方々の基準については、現行の28万円から47万円へと大幅に引き上げられることになりました。
在職老齢年金制度とは、厚生年金を受け取りながら働く方の「給与」と「年金」の合計額が一定の基準を超えた場合、年金の一部または全額が支給停止される仕組みを指します。この制度は、高収入を得ている高齢者に制度を支える側に回ってもらい、現役世代の負担を減らす目的で運用されてきました。しかし、せっかく働いても手取りが増えないという状況が、高齢者の就労意欲を削いでいるという指摘も根強く存在しています。
SNS上では「働けば働くほど年金が減るのでは、やる気がなくなるのも当然だ」という切実な声が上がる一方で、「一部の富裕層だけを優遇するのではないか」という懸念も広がっていました。今回の議論においても、厚生労働省は当初、基準を62万円まで引き上げる案を提示しましたが、公明党などから「低所得者への恩恵が薄い」との反発を受け、最終的に47万円というラインで落ち着くことになったのです。
高齢者の就業促進と制度の公平性の間で揺れる決着
政府がこの改革を急いだ背景には、生産年齢人口、つまり15歳から64歳までの働き盛りの人口が激減しているという深刻な社会問題があります。人手不足を解消するためには、経験豊かなシニア世代の力が必要不可欠です。2019年6月に閣議決定された「骨太の方針」でも、制度の廃止を視野に入れた迅速な見直しが明記されており、今回の法案提出はその一環と言えるでしょう。
しかし、厚生労働省の調査では、65歳以上の基準を引き上げても「明確な就業促進効果は確認できない」という意外な結果も示されました。これでは基準を見直す根拠が乏しいと判断されても仕方がありません。結果として、65歳以上の基準は据え置かれ、より就労への影響が大きいとされる60歳から64歳の層に重点を置いた改正案として、2020年1月の通常国会に提出される運びとなりました。
私個人の意見としては、単に金額のラインを上下させるだけでなく、高齢者が「社会に貢献している」と実感できるような抜本的な制度設計が望ましいと感じます。今の日本において、年齢に関わらず働きたい人が報われる社会を作ることは急務です。この改正が、単なる数字の調整に留まらず、多様な働き方を認める第一歩となることを期待せずにはいられません。
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