日本を代表する製造業の巨人、日立製作所がいま、劇的な変革の真っ只中にあります。その中心にあるのが、データから価値を生み出す独自のIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」です。同社はこの事業を加速させるため、かつてライバルと目された米ゼネラル・エレクトリック(GE)から、デジタル分野の核心を担っていた超一流の人材を次々と迎え入れています。
この大胆な引き抜きは、SNSでも「日立の本気度が凄まじい」「日本企業がシリコンバレーの英知を吸収する時代が来た」と大きな期待を呼んでいるようです。2017年には、GEデジタルのCOOを務めたブラッド・スラク氏を、海外展開の要である日立ヴァンタラへ招へいしました。同氏は現在、最高製品・戦略責任者として日立の舵取りを支えています。
さらに、GEデジタルのマーケティング責任者だったジョン・マギー氏も、日立の持つ製造、ヘルスケア、金融といった多岐にわたる知見とITの融合に無限の可能性を感じ、仲間に加わりました。このように世界のトップランナーが日立に集結している事実は、同社が提唱するデジタル変革が、単なるスローガンではなく世界基準の戦略であることを証明していると言えるでしょう。
ディズニーも注目する日立の圧倒的な解析力
日立の快進撃は、あのエンターテインメントの王者、米ウォルト・ディズニーとの提携にも現れています。2019年10月、両社はテーマパーク内のアトラクション保守にIoTを活用することで合意したと発表しました。IoTとは「モノのインターネット」を指し、あらゆる機器を通信でつなぎ、状態をリアルタイムで把握して効率的に制御する高度な技術のことです。
ディズニーの多くのアトラクションにはレールが敷設されており、日立が長年培ってきた鉄道事業のメンテナンスノウハウが直接活かされます。故障の予兆を事前に察知する「予兆検知」が導入されれば、夢の国でのトラブルは最小限に抑えられるはずです。日本の伝統的な「ものづくり」の技術が、最新のデジタル技術と融合し、世界を笑顔にする姿には胸が熱くなります。
また、インドでは最大手銀行とタッグを組み、POSデータの分析に乗り出しています。POSとは、私たちが買い物をする際にレジで記録される「販売時点情報管理」のことで、いつ、誰が、何を買ったかという膨大なデータが集約されます。日立はこれらを分析し、人々の購買動向や信用力を予測することで、新たな経済圏の創出を目指しているのです。
2.5兆円の巨額投資で見据える10年後の生存戦略
日立の東原敏昭社長は、中期経営計画において最大2兆5000億円という破格の戦略投資枠を設けており、そのうちIT部門だけでも8300億円を投じる構えです。これは、単なる設備投資ではなく、顧客の課題を深く理解し解決策を提示できる「人材」への投資でもあります。特に米国やアジアでの拠点強化に向けた、積極的なM&Aもその一環です。
2017年の米サルエアー社買収に続き、2019年4月にはロボット生産システムの米JRオートメーションテクノロジーズを1582億円で買収すると発表しました。これら一連の動きは、製造現場の深部にまで入り込み、物理的な機械とデジタルのデータを密接に結合させる狙いがあります。これこそが、他社には真似できない日立独自の強みとなるはずです。
日立ヴァンタラのブライアン・ハウスホルダーCEOは、10年後には世界的な大企業の半分が消滅する可能性があると警鐘を鳴らしました。生き残るための唯一の鍵は、いかにデータを活用できるかにかかっています。1910年の創業以来、脈々と受け継がれてきた職人気質を大切にしながらも、データ駆動型の企業へと脱皮しようとする日立の挑戦を、私たちは目撃しています。
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