トスカーナの奇跡!建築家・森ひかるが「採掘場」に見出したワインの聖域と不朽の美学

イタリア・トスカーナの美しい丘陵地帯に、2019年4月、一際異彩を放つ建築が産声を上げました。それが、建築家・森ひかるさんが設計を手掛けた「マッセートワイナリー」です。SNSでは「地面の下に宇宙が広がっているようだ」「自然と調和するモダンな美しさに圧倒される」といった驚きの声が広がっています。ブドウ畑を鋭く切り裂くような黒いコンクリートの壁に導かれ、訪れる人々は神秘的な地下の世界へと誘われるのです。

今回の設計において、森さんが掲げた独創的なコンセプトは「CAVA(カーヴァ)」です。これはイタリア語で「採掘場」を意味する言葉ですが、そこには「建てる」のではなく「大地をくりぬく」という、既存の建築概念を覆す深い哲学が込められています。ブランドのアイデンティティを形にするため、主要構造にはあえて無機質な打ち放しの鉄筋コンクリートが選ばれました。一見冷たい素材が、大地の力強さをより鮮明に際立たせています。

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重力を味方につける伝統と革新の融合

この壮大なプロジェクトにおいて、施主から提示された重要な条件の一つが「グラヴィティ・フロー」の導入でした。これはワイン造りの工程でポンプによる機械的な圧力を避け、重力のみを利用して果実や液体を移動させる醸造手法のことです。繊細なワインの品質を守るためのこのシステムを、森さんは地下建築という構造で見事に成立させました。機能性と美学がこれほどまでに高次元で融合した例は、世界的に見ても非常に稀なケースでしょう。

地下のワインセラーへ足を踏み入れると、そこには300個もの木樽が規則正しく並ぶ、思わず息を呑むような光景が広がります。森さんは「ワイナリー建築はブランドの哲学そのものを体現しなければならない」と力説します。時代に流されることのない「長寿建築」を目指した彼女の挑戦は、欧州の並み居る競合を抑えてコンペを勝ち抜いた、日本人建築家としての強い誇りと確かな実力が結実したものだといえるはずです。

ミラノを拠点に世界を彩る多彩な才能

イタリアに渡って28年。森ひかるさんの活動は、都市計画からインテリア、照明デザインまで驚くほど多岐にわたります。現在はカンパニア州での食品市場プロジェクトや、ナポリの観光施設のブランディングにも携わっており、そのバイタリティには驚かされるばかりです。一つのジャンルに捉われない柔軟な感性が、地域に根差した「地産地消」というテーマにおいても、どのような新しい価値を生み出してくれるのか目が離せません。

私自身の視点から言えば、森さんの建築には、土地が持つ記憶を大切にしながらも、未来へ向けた強い意志を感じます。単に美しい建物を作るのではなく、その土地の「重力」や「土」といった本質的な要素をデザインに組み込む姿勢は、現代の建築界において非常に重要な示唆を与えているでしょう。2019年11月27日、彼女が語るその哲学は、イタリアの太陽のように熱く、そしてワインのように深く私たちの心に響きます。

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