イギリス政治の命運を握る、与党・保守党の党首選で、ついに決選投票に進む2人の候補者が決定いたしました。テリーザ・メイ首相の辞任表明を受けて行われたこのレースは、ボリス・ジョンソン前外相(55)と、現職のジェレミー・ハント外相(52)という、新旧外相の対決という構図になりました。2019年6月20日に行われた下院議員による投票の結果、この両名が一騎打ちの最終決戦へと進出することになったのです。
この対決の最大の焦点は、もちろんブレグジット(Brexit)、すなわちイギリスの欧州連合(EU)からの離脱へのスタンスの違いにあります。ジョンソン氏は、たとえEUとの間で離脱条件に関する「合意」ができなくても離脱を実行する、いわゆる「合意なき離脱」も辞さないという、極めて強硬な離脱派の旗頭として知られています。これに対し、ハント氏はあくまでEUとの円満な関係を維持し、経済的な混乱を避けるために離脱合意を重視する穏健な離脱派の立場を取っています。この2人の考え方の違いが、今後のイギリスの進路を決定づけることとなるでしょう。
決選投票は、保守党の下院議員ではなく、約16万人に上る保守党員による郵便投票で実施されます。新党首、すなわち次期イギリス首相は、2019年7月22日の週に選出される予定です。現時点での情勢を見ると、候補者を絞り込むための下院議員投票で他を圧倒して独走したジョンソン氏が、保守党員の間でも圧倒的な支持を集めており、大きなリードを保っている状況です。
特に、ジョンソン氏は「合意があろうとなかろうと10月末に離脱する」と公言しているため、彼が首相に就任すれば、ビジネス界が最も懸念する合意なき離脱の可能性は一気に高まってしまうでしょう。合意なき離脱とは、EUとの貿易や人の移動に関する取り決めがないまま離脱期限を迎えることで、経済的な混乱や国境での検問導入など、多大な悪影響が懸念される事態を指します。この懸念は、今後の経済動向を占う上でも非常に重要なポイントであると言えるでしょう。
🇬🇧激戦の党首選、決選投票までの軌跡
今回の党首選は、当初2019年3月末に実現するはずだったEU離脱を達成できなかった責任を取り、メイ首相が辞任を表明したことを受けて始まりました。当初は10名の候補者が立候補しましたが、6月13日の初回投票以降、下位の候補者が順次除外され、保守党の下院議員313人による投票が5回にわたって繰り返されました。20日午前の4回目の投票ではサジド・ジャビド内相が落選し、残る3名で臨んだ同日午後の5回目の投票で、いよいよ最終候補者が決定しました。
本命と目されていたジョンソン氏は、この5回目の投票で下院議員の半数を超える160票という圧倒的な得票を獲得し、トップで決選投票への進出を決めました。一方、大接戦となった2位争いでは、ハント氏が77票を獲得し、75票のマイケル・ゴーブ環境相をわずか2票差でかわして、辛くも決選投票へと駒を進めたのです。この結果からも、ジョンソン氏の勢いが群を抜いていることがわかります。
投票直後、ジョンソン氏は自身のツイッターに「50%以上の議員票を獲得できたことを光栄に思う」と喜びのコメントを投稿しています。この独走ぶりは、SNS上でも大きな反響を呼び、「やはりボリスが本命」「彼のカリスマ性は凄い」といった声が多く見受けられ、ジョンソン氏の圧倒的な人気を裏付けていると言えましょう。同時に、「ハント氏の巻き返しに期待する」「合意なき離脱だけは避けてほしい」といった、ハント氏への期待や、ジョンソン氏の強硬姿勢への懸念を示す声も目立っていました。
👥対決の構図:カリスマと実務家の戦い
現在の党員向けの世論調査では、ジョンソン氏への支持が62%にも達しているのに対し、ハント氏への支持は11%にとどまっています。この状況が劇的に変化しない限り、強硬離脱派のジョンソン新首相が誕生する公算が高いと見られています。これは、長引くブレグジットの混乱に疲弊した保守党員の間で、「とにかく離脱を完了させる」というジョンソン氏の単純明快なメッセージが、強く響いている証拠かもしれません。
ジョンソン氏は、2008年から8年間ロンドン市長を務め、その間にその歯にきぬ着せぬ発言と個性的なキャラクターでカリスマ的な人気を集めてきました。2016年の国民投票では、EU離脱キャンペーンの先頭に立ち、離脱派勝利の立役者の一人となりました。しかし、その奔放な言動は、過去に人種差別的ともとれる失言の火種となったこともあり、首相としての資質には賛否両論があります。
一方のハント氏は、ジョンソン氏とは対照的に、長年の閣僚経験を持つ実務家としての側面が強い人物です。2018年には、辞任したジョンソン氏の後任として外相に就任しました。さらに、彼は日本に滞在経験があり、日本語も堪能であるという国際的な一面も持ち合わせています。彼の「合意重視」の姿勢は、国内経済の安定と国際協調を重視する層からの支持を集めています。
私見ではありますが、現状の支持率の差は、保守党員が「スピード感のあるブレグジットの実行」を最優先事項と考えていることの表れだと感じています。しかし、ブレグジットはイギリスの未来を大きく左右する重要な決断です。性急な「合意なき離脱」は、国内経済だけでなく、世界経済にも深刻な影響を及ぼしかねません。カリスマ性と実行力を誇るジョンソン氏か、それとも現実的な合意を模索するハント氏か。この選挙が、イギリスの、そして世界の未来にどのような影響を与えるのか、編集部として注視していく所存です。
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