2019年11月12日、日本経済新聞社が実施した「スマートワーク経営調査」の結果が明らかになりました。調査対象となった708社からは、労働人口の減少という大きな壁を前に、いかにして「人」という財産を輝かせるかという企業の必死の模索が透けて見えます。もはや働き方改革は単なる残業削減のフェーズを脱し、多様な人材がそれぞれの事情に合わせて活躍できる「柔軟な土壌」を育てる段階へと突入したと言えるでしょう。
特に注目を集めているのが、アサヒグループホールディングスの大胆な施策です。彼らが導入を進めているのは、出社必須の時間帯(コアタイム)を完全に撤廃した「スーパーフレックス制度」です。これにより、通院や家族の送り迎えといった個人的なスケジュールを優先しながら、最高のパフォーマンスを発揮できる時間を選んで働くことが可能になりました。制度が形式的なものに留まらず、若手からベテランまでが当たり前に活用している点は驚きです。
SNS上では、この「スーパーフレックス」という言葉に敏感に反応するユーザーが多く見られます。「自分の会社にも導入してほしい」という羨望の声から、「場所だけでなく時間の自由も確保されてこそ本当の効率化だ」という鋭い指摘まで、働き手の本音が溢れています。特に2019年に入り、働く女性が初めて3000万人を突破したというニュースも相まって、ライフステージに左右されない働き方への関心はかつてないほど高まっています。
場所の制約を解き放つ「ニアショア」と「地域限定」の衝撃
働く「場所」の改革も、2019年11月12日時点の大きな潮流です。IT大手のSCSKが推進する「ニアショア戦略」は、地方拠点にいながら大都市圏と同様の高度な案件に携われる仕組みです。ニアショアとは、業務を海外へ委託するオフショアに対し、国内の近隣(地方)に委託・移管することを指します。これにより、介護などのやむを得ない理由で地元へ戻る「Uターン」希望者などの離職を防ぎ、貴重なスキルを持つ人材を維持することに成功しています。
アサヒグループにおいても、工場勤務者を中心に「地域限定正社員」を1000名規模で採用するなど、転勤という日本特有の商習慣を見直す動きが加速しています。年間60万人もの人々が転勤を経験する中で、住み慣れた土地を離れずにキャリアを築ける選択肢があることは、従業員の心理的な安定に大きく寄与するでしょう。企業側にとっても、採用コストを抑えつつ地域に根ざした優秀な人材を確保できるという、まさにWin-Winの関係です。
また、東京海上ホールディングスではテレワークの徹底により、出産を経験した女性社員の多くが職場復帰を果たしているといいます。営業職の女性がこの10年で16倍に増えたというデータは、適切な環境さえ整えば、これまで埋もれていた才能がどれほど開花するかを物語っています。さらにNTTデータが進める「アライ(LGBTなどの性的少数者を理解し、支援する人)」制度のように、心理的安全性を守る取り組みもダイバーシティ経営の核となっています。
筆者の見解としては、こうした「スマートワーク」の成否は、経営層がいかに「管理」から「信頼」へマインドセットを切り替えられるかにかかっていると考えます。制度を作るだけでは不十分であり、個々の事情を認め合う組織文化の醸成こそが、次世代の競争力を生むのではないでしょうか。2019年4月から始まった有給休暇の取得義務化を最低限のルールとし、その先にある「一人ひとりが誇りを持って働ける場所」の構築に、全企業が真剣に向き合う時が来ています。
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