2019年11月14日のアメリカ株式市場では、米中貿易協議の進展を見極めたいという投資家の心理から、ダウ工業株30種平均はわずかな反落を見せました。しかし、そんな膠着状態の相場でひときわ輝きを放ったのが、世界最大の小売業者であるウォルマートです。同社が発表した2019年8月から10月期の決算は、純利益が前年同期比で92%増という驚異的な数字を叩き出し、株価は上場来高値を塗り替える歴史的な一日となりました。
長らく「ECの巨人」アマゾン・ドット・コムの勢いに押されてきた同社ですが、ダグ・マクミロンCEOが進めてきたデジタル戦略が、ついに大きな果実を実らせ始めています。SNS上では「もはや古い小売店ではない」「買い物の利便性が劇的に変わった」といった好意的な声が溢れており、今回の4四半期連続となる最終増益は、投資家だけでなく消費者からも確かな支持を得ている証拠と言えるでしょう。
快進撃の立役者は、ネット通販事業の41%増収という驚異の成長率です。これを支えているのが「BOPIS(ボピス)」と呼ばれる画期的なサービスで、これは「Buy Online, Pick-up In Store」の略称となります。日本語では「オンラインで購入し、店舗で受け取る」という意味で、広大な売り場を歩き回る手間を省き、品切れのリスクも回避できるこの仕組みは、忙しい現代人のライフスタイルに見事に合致しました。
ウォルマートはこのBOPISを、2019年末までに全米約5000店舗へ展開する計画を急ピッチで進めています。特筆すべきは、スマホのバーコードをかざすだけで商品を受け取れる「ピックアップタワー」という無人機の導入です。これまでは広い店内で目当ての野菜を探すのにも一苦労でしたが、プロの店員が良質な生鮮品をあらかじめ取り置いてくれるため、仕事帰りでも新鮮な食材を確実に手に取ることが可能になりました。
かつては「デジタル投資が重荷だ」と揶揄された時期もありましたが、現在はその評価が180度転換しています。専門家からも、消費者の接点を守り抜いたウォルマートの「独り勝ち」を予感させる声が上がっており、これは非常に興味深い現象です。一方でアマゾンは物流投資の負担増から減益に転じており、さらに有名ブランドが直営サイトを優先し始める「脱アマゾン」の動きも、ウォルマートにとって追い風となっているようです。
米国内では実店舗の閉鎖が相次ぐ「小売の終焉」が叫ばれてきましたが、私は今回の躍進こそが「実店舗の価値」を再定義したと感じています。ネットの利便性と物理的な拠点の安心感を融合させたウォルマートの戦略は、単なる安売り王からの脱却を意味しています。2019年11月15日現在の状況を見る限り、実店舗はもはやコストではなく、強力な武器として再びマーケットの主役に躍り出たと言えるでしょう。
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