国内の製紙産業を牽引する王子ホールディングス(HD)やレンゴーといった大手が、今、東南アジアを舞台にした激しい段ボールの生産競争に乗り出しています。経済成長が著しい東南アジアでは、生活水準の向上に伴い段ボールの需要が急拡大しており、王子HDによると「年率5%を超える成長」が見込まれる、まさに業界の主戦場と化しているのです。これは、国内での印刷用紙の需要が減少傾向にある中、段ボール事業を収益の柱とし、次の成長を担う事業を育てようという、日本の製紙業界にとって極めて重要な戦略を映し出しています。この記事は、2019年6月21日時点の状況に基づき、新興市場での覇権争いの現状をお伝えします。
日本国内における段ボールの需要は、インターネット通販の拡大を背景に堅調ではありますが、その伸び率は年率1%程度に留まっているのが現状です。これに対し、桁違いの成長ポテンシャルを持つ東南アジア市場は、日本の製紙大手が今後の成長を左右するフロンティアとなっています。段ボールは、運搬費用を抑えるために生産拠点を消費地の近くに置く必要があり、一般的に地場の企業が強みを持つ製品です。しかし、日本の大手各社は、国内の需要減少を見越し、早くから海外への積極的な投資を展開してきました。
国内製紙最大手の王子HDは、既に東南アジアとインドで合計21カ所もの段ボール生産拠点を持ち、特にマレーシアやカンボジアでは3割、ベトナムでも1割のシェアを獲得しています。同社は、インドを含む東南アジア全体で、現在の約1.5倍にあたる約13億平方メートルの段ボールを2020年に販売するという、非常に意欲的な目標を掲げています。これは、日本全体の段ボール生産量の実に10分の1に相当する規模です。この目標達成に向け、2018年から2021年にかけて500億円を投資する計画が進行中で、2020年までにはベトナムなどで3つの新工場を建設するほか、インドネシアにも初めて生産拠点を設ける予定であるとのことです。
段ボールで国内首位に立つレンゴーも、東南アジアに26の生産拠点を展開しており、この競争の重要な一角を担っています。2016年には、ベトナムで段ボールの元となる厚手の紙「段ボール原紙」の製造設備を増強し、生産能力を約50万トンへと倍増させました。また、総合商社の丸紅も、ベトナムで100億円を超える大規模な投資を行い、2020年度に段ボール原紙の生産拠点を稼働させる計画で、日本勢の東南アジア市場への注力ぶりは明らかであると言えるでしょう。
増産に動く中国・タイ勢との攻防が激化
東南アジアの段ボール市場の成長は、日本勢だけが注視しているわけではありません。中国最大手のナインドラゴンズは、2008年にベトナムの段ボールメーカーを買収し、2017年には段ボール原紙を35万トン増産するなど、攻勢を強めています。また、タイの大手素材企業であるサイアム・セメント・グループ(SCG)のような地場企業も、フィリピンの包装材工場に約174億円を投じて増強するなど、積極的な投資を行っており、日中タイの三つ巴の構図が鮮明になってきました。
包装材として使われる段ボールは、加工食品や日用品などの運搬に欠かせないため、景気の動向に左右されやすい側面があります。ここで注目すべきは、国際紙パルプ商事の田辺円社長が指摘するように、「中国企業の東南アジアへの生産シフト」が進んでいるという点です。中国は国内景気の減速によって段ボールの需要予測が難しくなっており、このリスクを回避し、さらなる成長を求めて東南アジアへと軸足を移しているのでしょう。この動きは、東南アジアにおける競争をさらに激化させる要因となるに違いありません。
私見では、日本の製紙大手が長年培ってきた高い技術力や品質管理能力は、東南アジア市場での大きなアドバンテージになるはずです。しかし、単価の安い段ボールの事業では、地場企業や中国勢による低価格攻勢も予想され、品質だけでなく、コスト競争力やサプライチェーンの最適化が非常に重要になってくるものと思われます。この新興市場における「段ボール覇権争い」は、日本の製紙業界が未来の成長基盤を確立できるかどうかの試金石となるでしょう。SNS上では「国内の紙の需要減は深刻だと思っていたが、海外でこんなにも激しい戦いがあったとは」といった驚きの声や、「日本の技術力で東南アジア市場を席巻してほしい」といった期待の声が寄せられており、業界の動向に高い関心が集まっているようです。
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