2019年6月21日、市場関係者の間で今年12月末の日経平均株価の予想が大きく分かれる結果となりました。アメリカ連邦準備理事会(FRB)が年内の金融緩和に転じる可能性を示唆したことで、株式市場には期待感が広がっていますが、上値の予想は2万5000円から2万円と、実に5000円もの幅があります。この予測の差を生んでいる最大の要因は、世界経済の二大懸念事項である「米中貿易戦争」の行方と、日本企業の収益に直結する「円高」の動向に他なりません。これらの不確実要素が、今後の企業の経営環境や業績に大きな影響を与えると見られているため、市場関係者の見解も慎重になっているのでしょう。
直近の日経平均株価は、2019年6月4日に記録した直近の底値である2万408円から、既に1000円を超える上昇を見せています。この背景には、FRBが年内にも金融緩和、すなわち利下げ(政策金利を引き下げて景気を刺激する政策)を行うことへの期待があります。利下げは一般的に景気テコ入れ策として機能し、株式市場には追い風となります。しかし、この利下げは同時に日米の金利差を縮小させるため、円高が進行する可能性も指摘されています。この円高(外国の通貨に対して円の価値が高くなること)が日本企業、特に海外で稼ぐ外需企業(輸出などを通じて外貨を稼ぐ企業)の業績を圧迫するのではないかという懸念から、市場関係者の見解は二分されているのです。
強気派の意見として、三井住友DSアセットマネジメントの佐藤寿紘ファンドマネージャーは、アメリカに加えて欧州や新興国でも金融緩和の傾向にあることから、「グローバルな金融緩和の流れの中で、株式への資金流入が続き、日本株も買われる可能性が高い」と分析しています。また、楽天証券の窪田真之チーフ・ストラテジストは、円高が外需企業の業績を押し下げる可能性について認めつつも、「各国で景気拡大が伴えば、為替要因のマイナス影響を全体として吸収できる」との見解を示しており、年末の上値予想を最も強気の2万5000円としています。世界的な景気拡大が、貿易摩擦や円高といった個別のリスクを凌駕するほど強力であれば、日本株も大きく飛躍すると期待できるでしょう。
一方で、慎重派からは「円高進行が企業収益に打撃を与える」との懸念が強く出ています。ニッセイアセットマネジメントの松波俊哉チーフアナリストは、「多くの企業が想定している為替レートよりも現状は円高方向に振れつつあり、これが今年度の企業収益を直撃する可能性がある」と警鐘を鳴らしています。この見方は、企業の利益計画の前提が崩れることで、市場が日本企業の収益見通しを下方修正するリスクを示唆していると言えます。円高は輸出で得た外貨建ての利益を円に換算する際に目減りさせてしまうため、日本経済の命綱とも言える製造業にとって深刻な問題なのです。
米中貿易摩擦の行方が、年末相場を左右する最大のカギ
現在の市場関係者が最大の懸念事項として共通認識を持っているのが、米中貿易摩擦の行方です。G20サミット、すなわち20カ国・地域首脳会議で、アメリカと中国の首脳会談が開催される公算が大きくなっていることから、この会談の結果が市場のムードを決定づけることでしょう。この問題に対する見方も、またしても市場関係者の間で割れています。三井住友DSアセットマネジメントの佐藤氏は、2020年11月のアメリカ大統領選挙を睨み、「トランプ大統領は景気に悪影響を与える貿易摩擦を解消に向かわせ、緊張関係は2019年秋ごろに峠を越える」と予測し、秋口には事態が好転する可能性を示唆しています。同様に、UBSウェルス・マネジメントの居林通ジャパンエクイティリサーチヘッドも、「完全な合意や決裂には至らず、2019年末にかけて部分的な合意に落ち着く可能性が最も高い」と、最悪の事態は避けられるとの見方を示しています。
しかし、ニッセイアセットの松波氏は、この対立を「世界の覇権、すなわちヘゲモニー争いに絡んだ根本的な問題」と捉えており、両国とも絶対に譲らないだろうと指摘しています。首脳会談による事態打開にも懐疑的で、「ベストシナリオでも交渉継続に留まる」と、長期化の可能性を強く示唆しています。また、野村アセットマネジメントの榊茂樹チーフ・ストラテジストは、米中対立の影響で既に経済成長が鈍化している中国経済の先行きに強い警戒感を示しており、「中国政府の景気刺激策でも、景気の底上げまでは期待しにくい」と分析しています。そして、中国依存度の高い日本企業への影響は避けられず、年末の下値は1万7000円もあり得ると、市場関係者の中でも最も悲観的な見通しを示されています。
SNSでの反響と編集者としての見解
この報道に対するSNSでの反響を見ると、「米中摩擦が長引く限り、日本株は厳しい」「結局、トランプ大統領次第なのか」といった懸念の声が多く見受けられました。特に「利下げで円高になるのが怖い」という声は、個人投資家の間で円高への警戒感が非常に高まっていることを示しています。また、年末の上値と下値の幅が大きすぎることについても、「結局、誰にも分からないということか」といった諦めや皮肉のコメントも見受けられました。この状況は、不確実性が極めて高い現在の市場の難しさを象徴していると言えるでしょう。
編集者として、私はこの状況を**「希望とリスクが同居する、極めて難しい局面」**と見ています。FRBの金融緩和という「希望の光」がある一方で、米中貿易摩擦という「最大の暗雲」が立ち込めており、どちらに転んでもおかしくない状況です。特に、野村アセットマネジメントの榊氏が指摘する「下値1万7000円」という見通しは、中国経済の失速が現実となった場合の日本株の脆弱性を浮き彫りにしています。しかし、逆に楽天証券の窪田氏の「上値2万5000円」という見通しは、米中が部分的にでも合意し、世界的に金融緩和の波が押し寄せる「最良のシナリオ」を想定したものでしょう。私としては、米中摩擦の長期化リスクをより重く見るべきと考えており、年末にかけては不安定な値動きが続く可能性が高いのではないでしょうか。投資家にとっては、強気と弱気、両方のシナリオを想定した柔軟な戦略が求められる一年になるでしょう。
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