核軍拡の影!? 米国「臨界前実験」とロシア「条約違反疑惑」から探る、核兵器開発の最前線

2019年6月現在、世界の核兵器開発を巡る米ロ間の不信感が、再び高まっています。その背景には、アメリカが実施した「臨界前核実験」と、ロシアによる「核実験実施の疑惑」があります。核兵器の保有国である両国の動向は、核軍縮を願う国際社会にとって看過できない問題であり、その行方には大きな注目が集まっているのです。

アメリカの国立研究所は、2019年5月、核爆発を伴わない「臨界前核実験」を2月に実施したと発表しました。この実験は、核兵器の起爆剤を模擬した火薬を爆発させ、核物質であるプルトニウムなどの状態を詳細に調べるものです。核分裂反応が連鎖的に起こり、大量の熱エネルギーを放出する「臨界」に至らないよう、核物質の量を調整するため、核爆発は起きません。アメリカが主張する目的は、製造から年月を経た核兵器の性能を維持するために必要なデータを収集することにあります。

具体的には、ローレンス・リバモア国立研究所の発表によりますと、2019年2月にネバダ州の砂漠の地下で行われた「エディザ」と名付けられた実験で、「備蓄している核兵器の安全性に役立つプルトニウムのデータを取得した」とのことです。これは、コンピューターシミュレーションと実際の実験データを比較することで、核兵器の安全性評価の信頼性を高める狙いがあると言えるでしょう。

一方で、ロシアに対しては、「包括的核実験禁止条約(CTBT)」に違反する核実験を実施したのではないかという疑惑が浮上しています。CTBTとは、宇宙空間、大気圏内、水中、地下を含むあらゆる場所で、核爆発を伴う実験を禁止する国際条約のことです。1996年に国連で採択されましたが、条約の発効に必要な44カ国の批准が完了しておらず、未だに効力は発生していません。

しかし、CTBTは国際的な事実上の規範として機能しており、この条約に基づいて設置されたCTBTO(CTBT機関)が、世界中の施設で地震や放射性物質を分析し、核爆発の監視活動を国際的に実施しています。アメリカは、ロシアがこの規範を破り、CTBTに違反する核実験を実施していると強く主張しているのです。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は2019年5月、ロシアが北極圏の島で超低出力の核実験を実施した可能性があるという米情報機関の分析を報じ、米国防情報局(DIA)のロバート・アシュリー長官も、講演で「核実験を通じてロシアが核戦力を増強している可能性がある」と厳しく批判しました。これに対し、ロシア側はアメリカの指摘に根拠がないと反発しています。

専門家である東京工業大学助教の沢田哲生さんは、「核爆発による地震を検知できないように工夫された小規模な実験であれば、国際的な監視網に引っかかりにくく、検証が非常に難しい」と指摘されています。つまり、条約違反の有無を明確に立証することが困難な状況が、疑惑をさらに深めていると言えるでしょう。

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エスカレートする米ロの対立と新型兵器開発

今回の実験と疑惑は、核軍拡への懸念を拭い去ることができない米ロの対立が背景にあります。2019年2月には、アメリカが中距離核戦力(INF)廃棄条約の履行を停止するとロシアに通告し、ロシアもこれに追随する形で応酬を続けています。さらに、トランプ政権は2018年2月に公表した今後5年から10年の核戦力の指針「核体制の見直し(NPR)」で、爆発規模の小さな核爆弾の新規開発や核の使用条件の緩和などを打ち出し、核兵器への依存度を高める姿勢を示しました。

一方のロシアも、迎撃が極めて難しいとされる超音速の核ミサイルや、深海を高速で移動して核攻撃を可能にする原子力魚雷など、新型兵器の開発を積極的に進めています。日本エネルギー経済研究所常務理事の黒木昭弘さんは、「仮にロシアが核実験を実施しているのなら、新型兵器の開発に役立てている可能性は否定できない」と分析しています。また、アメリカの臨界前核実験についても、「新型兵器開発に必要な情報を集めているのではないかという懸念は残る」と述べています。

SNS上でも、この米ロの動向に対する反響は大きく、「また核開発競争に戻ってしまうのか」「INF条約の破棄といい、不安が増すばかりだ」といった声が多数見受けられます。特に唯一の被爆国である日本の読者からは、「核軍縮への道筋が遠のくのは残念でならない」という、切実な意見も投稿されているのです。

核軍縮への道のりは一層厳しく

私見を述べさせていただきますと、今回の報道は、核抑止力を維持するための「やむを得ない措置」という側面と、国際的な核軍縮の流れに逆行する「危険なエスカレーション」という二面性を持っていると感じています。特に、アメリカの臨界前核実験が、保有核兵器の安全性確保という目的以上に、新型兵器開発に資するデータを収集しているのではないかという懸念は、核軍拡の扉を再び開くことになりかねません。これは、世界平和を目指す上で極めて重大な問題であります。

国際社会が、核分裂を連鎖的に起こし、膨大な熱エネルギーを発生させる「臨界」現象を悪用した核兵器の脅威から解放されるためには、CTBTの早期発効に向けた努力や、米ロ間の信頼回復が不可欠です。しかし、現状の対立が続けば、唯一の被爆国である日本が長年切望してきた核軍縮のさらなる前進は、ますます見通せなくなるでしょう。世界は今、核を巡る「科学」と「政治」の狭間で、重要な岐路に立たされていると言えるのではないでしょうか。

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