私たちの生活に欠かせないスマートフォンですが、近年の自然災害による大規模停電で「つながらない」という不安を抱えた方も多いでしょう。こうした事態を重く見た総務省は、2019年10月に携帯キャリア大手各社に対し、基地局へ長時間電力を供給できる予備電源の設置を義務付ける検討を開始しました。これは、災害時でも通信ネットワークを維持し、命を守る情報を途切れさせないための画期的な一歩と言えます。
SNS上では、このニュースに対して「避難所での連絡手段確保に直結するので心強い」といった賛成の声が目立ちます。その一方で、「山間部などの基地局まで対応できるのか」という技術的な課題を不安視する意見も見受けられました。そもそも基地局とは、スマートフォンの電波を中継するアンテナ設備のことですが、これらは電力会社からの給電が止まると機能しなくなるため、予備電源の強化はまさに急務の課題なのです。
立ちはだかる投資の壁と技術的課題
しかし、この「24時間以上の給電」という目標を達成するには、非常に高いハードルが存在します。例えば、KDDIが保有する全国15万か所を超える基地局のうち、現時点で24時間以上の稼働が可能な予備電源を備えているのは、わずか2000か所程度、全体の1パーセント強に過ぎません。多くの基地局では、数時間程度の蓄電池しか備わっていないのが実情であり、すべての設備を刷新するための莫大なコストが懸念されています。
携帯電話各社の幹部からも、すべての基地局に高価な長時間蓄電池を導入することの費用対効果について、疑問の声が上がっています。また、近年の災害では、当初の設計をはるかに上回る猛烈な暴風が吹き荒れており、電源確保だけでなく、アンテナそのものの物理的な耐久力も大きな課題となってきました。ただ電気があれば良いというわけではなく、自然の猛威からハードウェアを守るための総合的な対策が求められているのです。
AIが救う通信の未来と官民連携
こうした苦境を打破するため、NTTドコモなどはAI(人工知能)を活用した基地局の迅速な復旧システムの導入を模索しています。さらに、ライバル同士である携帯各社が連携し、インフラを相互に補完し合う体制の構築も検討され始めました。総務省は、2020年3月末までの年度内を目途に省令や告示の改正を目指しており、法的な裏付けを持って通信の安定化を推し進める姿勢を鮮明にしています。
個人的な見解を述べさせていただくと、通信はもはや電気や水道と同じ「公共インフラ」であり、営利企業のコスト論理だけで語るべき段階を過ぎています。もちろん企業の負担は大きいですが、AIによる効率化や各社の連携によって、強靭なネットワークを築くことは日本全体の防災力を底上げするはずです。2019年11月20日現在、私たちはまさに、テクノロジーと政策が融合して災害に強い社会を作る歴史的な転換点に立ち会っていると言えるでしょう。
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