2019年6月21日、世界をリードする巨大IT企業である米アップルや、日本を代表するソニーをはじめとする20社が、日本のエネルギー政策に大きな一石を投じる提言を共同で発表しました。この提言の核となるのは、日本の総発電量に占める再生可能エネルギー(以下、再エネ)の比率を、2030年までに「50%」にまで引き上げるべきという、極めて野心的な目標です。これは、企業活動で使用する電力を100%再エネでまかなうことを目指す国際的なイニシアチブ、**「RE100」**に加盟する日本企業19社とアップルが、都内で開催されたシンポジウムで示したものです。
提言が発表された2019年当時の日本の状況を見てみましょう。2017年度時点での再エネ比率はわずか約16%に留まっていました。そして、政府が2018年夏に決定した「エネルギー基本計画」では、2030年の再エネ比率の目標値を22%から24%としています。今回の20社による提言は、この政府目標を実に2倍以上に跳ね上げることを求める、異例の要求と言えるでしょう。提言の背景には、企業がより安価で安定した再エネを調達できる環境が整えば、それこそが日本企業の国際的な競争力向上に直結するという強い信念があるようです。
この提言を受けて、SNS上では経済界や環境問題に関心を持つ層から大きな反響がありました。「企業のコスト意識に基づいた要求は説得力がある」「政府はもっと危機感を持つべきだ」といった賛同の声が上がる一方で、「現実的に考えて50%は非現実的ではないか」「電力網(インフラ)の整備が追いつくのか」など、実現性の困難さを指摘する意見も多く見られました。しかし、世界的な巨大企業が揃って政策提言を行ったことは、再エネ拡大が「環境対策」という側面だけでなく、「経済戦略」として極めて重要であるという認識を広げる効果を生み出していると言えるでしょう。
具体的に再エネを拡大させるための環境整備として、提言ではインフラ、すなわち電力供給の基盤となる設備の強化を強く要求しています。特に、地域間で電力を融通し合うための**「連系線」(電力系統の地域間を結ぶ送電線)の増強や、大規模な電力を長距離輸送するための「海底送電網」**の整備について、「早期に検討に着手すべき」だと訴えられています。これらのインフラが整備されることによって、太陽光や風力といった発電量が天候に左右されやすい再エネも、安定して必要な地域に供給できるようになることが期待されます。
また、今後本格的な開発が見込まれる**「洋上風力発電」についても、提言は重要な政策提言を含んでいます。洋上風力は、海上に設置された巨大な風車で発電するため、安定した風力を得やすく、大きな発電量を見込めるとして注目されている分野です。しかし、開発にあたっては、地元の漁業組合との交渉や、環境に与える影響を評価する「環境アセスメント」**といった手続きが複雑で、開発事業者に大きなリスクを負わせてしまうのが現状です。このリスクを大幅に低減するためにも、漁業組合との交渉やアセスメントなどを政府主導で積極的に実施する政策が必要だと、提言では力説されています。
提言発表のシンポジウムでは、米アップルのバイスプレジデントであるリサ・ジャクソン氏が登壇し、「日本ではコスト競争力のある再エネを調達できる環境づくりが欠かせない」と明確に強調しました。私見を述べさせていただくと、この提言は、日本のエネルギー政策が「国」だけでなく「企業」主導で動いていることを示唆しています。国際競争において、環境への配慮(サステナビリティ)は今や企業の**「必須条件」**となり、再エネ調達がコストを下げる手段ともなっています。世界的な企業が本気で「50%」を要求している状況を、政府は単なる「要望」ではなく、日本の未来の経済成長を左右する「戦略的な提言」として真摯に受け止め、迅速に行動に移すべき時が来ているのではないでしょうか。
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