2019年6月21日、オフィス市場から驚くべきニュースが飛び込んできました。オフィスビル仲介大手の三鬼商事が発表したデータによると、東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の2019年5月度におけるオフィス空室率が、なんと1.64%という歴史的な低水準を記録したのです。これは前月比から0.06ポイントの低下となり、2ヶ月連続で下落しています。特に注目すべきは、月次データが残る2002年1月以来の最低記録を、2019年4月に続き、再び更新したという事実でしょう。
この極めて低い空室率は、都心部でオフィスを探す企業にとって、まさに「借り手市場」から「貸し手市場」へと移行していることを明確に示しています。空室率とは、貸し出されているオフィススペース全体に対し、借り手が決まっていない(空いている)スペースの割合を示す指標です。この数値が低いほど、オフィス需要が非常に旺盛であることを意味します。SNSでは、「移転を考えているが、なかなか良い物件が見つからない」「家賃が高騰し続けている」といった、オフィスを探す企業の担当者からの悲鳴にも似た反響が多数見受けられました。これは、企業の採用活動が活発で、事業拡大に前向きな企業が多いことの裏返しとも言えるでしょう。
具体的な内訳を見てみますと、2019年5月に完成した新築ビルの空室率は前月比で3.13%とやや高い水準ですが、これは竣工直後のデータであり、実際にはほとんどのビルが満室に近い状態でスタートしているとのことです。一方、既に利用されている既存ビルの空室率は1.59%と、前月よりも0.07ポイント低下しています。このデータからは、新旧問わず、都心のオフィススペースに対する需要が底堅く、一度入居したテナント(借り手)が契約を解除する解約の動きも少ない状況が続いていることが見て取れますね。
私の見解ですが、この超低空室率の背景には、IT企業を中心とした成長産業の勢いが、都心の一等地へのオフィス集中を加速させている状況があると思われます。都心5区は、単なるビジネス拠点としてだけでなく、優秀な人材を獲得し、取引先とのアクセスを向上させるための「ブランド戦略の核」として位置づけられているのでしょう。しかし、この需給のひっ迫は、オフィス家賃のさらなる高騰を招き、特に体力のない中小企業にとっては大きな経営課題となる可能性も秘めています。市場全体が活況を呈していることは喜ばしいですが、この一極集中がどこまで持続可能なのか、今後も注視していく必要があると考えています。
📈労働市場も活況!時給と物流コストの上昇傾向
オフィスの空室率だけでなく、この時期の他の経済指標にも景気の良さが表れています。三大都市圏の2019年5月のアルバイト・パートの平均時給は1,051円となり、前年同月比で27円も上昇しています。また、派遣社員の平均時給も1,583円と、前年同月比で59円の大幅な伸びを見せているのです。これらのデータは、企業が人手不足を解消するために、より高い賃金を提示している状況、すなわち労働市場が非常にタイトになっていることを示しています。これは賃金上昇という形で、働く人々の生活に良い影響をもたらすでしょう。
さらに、モノの流れを示す物流関連のデータにも変化が見られます。アジア発米国向けコンテナ輸送量は、20フィートコンテナ換算で143万5,565個となり、前年同月比で1.4%増加しています。これは、世界経済、特に米国向けの輸出が堅調に推移していることを示唆しています。また、国内の物流コストも上昇傾向にあり、トラック運賃(東京〜大阪間の片道空き平均値)は、4トン車で5万3,359円(前年同月比8.82%増)、10トン車で7万4,267円(前年同月比2.74%増)となっています。この運賃の上昇は、ドライバー不足や、働き方改革による労働環境改善のコストが、徐々に輸送費に転嫁されている現状を反映していると言えるでしょう。
オフィス市場の活況、賃金の上昇、そして物流コストの増加。これらの指標は、2019年5月時点の日本経済が、企業の事業拡大意欲に支えられ、力強い成長のフェーズにあることを物語っています。特に、都心オフィスの需給ひっ迫は、経済活動の中心地への集積が進んでいることの象徴です。この勢いが、今後どのような形で地方経済やサプライチェーン全体に波及していくのか、非常に興味深い局面を迎えていると言えるでしょう。
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