2018年12月に本格稼働を果たした安川電機様の新しい製造拠点、「安川ソリューションファクトリ」(埼玉県入間市)は、製造業における革新的な試みとして大きな注目を集めています。この工場は、あらゆるモノがインターネットに接続される技術であるIoT(Internet of Things)、そして人工知能(AI)や最新鋭の産業用ロボット、さらには自動搬送車(AGV)といった先端技術を駆使して、生産効率の極限まで高めることを目指したスマート工場の好例と言えるでしょう。特に「見える化・データ活用」と「自動化・省力化」を徹底することで、従来の常識を覆すほどの生産性向上を実現しています。
その具体的な成果は目覚ましいものがあります。例えば、主力製品の一つであるサーボアンプの生産において、製品ができあがるまでの時間を示すタクトタイムを従来の90秒からわずか30秒へと3分の1に短縮されました。また、顧客への製品納入にかかる期間である製造リードタイムも、なんと1週間から1日以内という6分の1に劇的に短縮されているとのことです。さらに、生産ラインで働く作業者の数も、従来であれば300人が必要だった規模のラインを100人で運営できるまで削減し、同時に最少1ロットからという多様な製品の少量生産にも柔軟に対応できる体制を構築されています。
工場の中枢を担う「統合司令室」の秘密
この安川ソリューションファクトリを象徴するのが、2階に設置された「統合司令室」です。巨大な8枚の大型モニターが並ぶ室内には、工場内のあらゆる生産設備から集められた稼働データや生産実績といった情報が、すべてリアルタイムで集約されています。これらのデータは、工場のレイアウト図上に分かりやすく表示されたり、グラフ化されて映し出されたりするため、生産状況が「一目で分かる」設計になっているのです。
司令室に常駐する監視員の方々は、生産の進捗を常に細かく見守っています。もし現場のどこかで異常が発生すれば、レイアウト図上の該当箇所が即座に赤く光り、警告を発する仕組みです。これにより、トラブルが起きた際に担当者を迅速にラインへ急行させることが可能となり、問題の早期解決につながります。工場長の白石聡氏も毎日のように司令室に立ち寄り、その日の工場の様子を確認されており、監視員の方々が操業モニターやオーダー管理画面を見ながら活発に議論を交わす様子は、ここでは日常的な光景となっています。
IoT普及が実現したデータの「一元管理」
実は、工場内にこのような統合司令室を設置することは、安川電機様にとって初めての試みだそうです。その背景には、収集できるデータの種類と量の劇的な進化があります。白石工場長によると、「これまでも生産実績などは集めていたが、収集するデータの種類や粒度が格段に違う」とのこと。工場内の情報を一元管理する「コックピットルーム」という構想は数十年前から存在しましたが、必要なデータを集めることが困難であったため、なかなか実現できませんでした。しかし、昨今のIoT技術の普及によって、ようやくその理想が現実のものとなったのです。
司令室の有効性を担保するためには、工場内の設備から集められるリアルタイムのデータが不可欠です。安川ソリューションファクトリでは、サーボモーターやサーボアンプといった製品を生産する設備や装置そのものに、安川電機様独自のセンサー機能を付加し、トルク(回転)や温度などのログデータをミリ秒(1000分の1秒)単位という極めて細かい粒度で計測し、吸い上げています。
ここで重要な役割を果たすのが、データの**「時間軸」を合わせることです。個別の装置や設備から集めたデータの時刻(タイムスタンプ)がバラバラでは、データの関連性を判別できず、有効な分析ができません。そのため、コントローラーによってデータの時間軸を正確に同期させることが、データ活用の鍵となります。
司令塔となる自社開発ソフトウェア「YCP」
そして、最終的に集約されたすべてのデータを管理するのは、安川電機様が自社で開発された管理ソフトウェア「YASKAWA Cockpit」(ヤスカワコックピット、略称YCP)です。YCPは、データの収集から「見える化」、そして解析までを担う、まさに司令室の中枢機能と言えるでしょう。ビッグデータの活用や詳細なデータ分析を行う際、あるいは生産計画や統合基幹業務システム(ERP)といった上位システムへデータを連携する際も、このYCPでデータを一元管理し、外部へ送る仕組みとなっています。
スマート工場においては、単にデータを集めるだけでなく、いかに分析し、工場のさらなる改善へつなげられるかが問われます。安川ソリューションファクトリでは、AIを活用した分析によって、製品の検査の自動化や将来の故障予知だけでなく、上位システムへのフィードバックによる生産計画の最適化などにも役立てています。
AIによる熟練技の継承と予防保全
特に注目すべきは、AI分析による自動化への取り組みです。例えば、サーボモーターの異音検出の工程では、現在、ベテランの技能者の方がストロー状の棒をモーターに近づけて、音のわずかな変化から異常を聞き分けています。この熟練の技を要する作業をAIに代替させるため、現在、AIの学習に用いるための教師データの収集が進められている段階です。これが実現すれば、「熟練者を育成する時間やコストを削減できるだけでなく、人に依存しない、ばらつきのない高効率な検査が可能になる」と同社は期待されており、2019年中の実用化を目指しているとのことです。
また、サーボアンプの組み立てラインでは、ロボットの関節部分にある減速機という部品の摩耗による故障を予測する取り組みにも挑まれています。将来的に起こり得る故障を事前に発見し、計画的に部品を交換する予防保全は、AI活用の中でも特に難易度の高い領域です。安川電機様は、減速機の歯車の摩耗によって発生し、オイル(潤滑油)に溶け込む鉄粉の濃度変化と、ロボットの稼働データ(トルクなど)を組み合わせたパターンをAIに学習させています。
これにより、減速機の故障が発生しそうな日時を予測することが可能になるのです。AI分析によって予測日が明確になれば、YCPの画面に警告を表示してメンテナンスを促します。計画的な交換作業が可能になるため、突発的な故障による生産ラインの停止、すなわちダウンタイム**を防ぐことができるでしょう。このような技術の導入は、製造業における働き方や生産のあり方を根本から変える可能性を秘めており、私自身の意見として、今後の製造業のデジタル化の方向性を示す重要な一歩だと強く感じています。
この革新的な取り組みに対し、SNS上でも「日本の製造業の希望だ」「ここまで進化しているとは驚き」「まさに未来の工場」といった賞賛の声が多数見受けられ、安川電機様の挑戦が大きな反響を呼んでいることが伺えます。
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