🏆テレビ業界に警鐘!「NHK優位」が示す民放・制作会社の危機とネットフリックス時代の活路〜ATP賞の衝撃〜

2019年6月10日に発表された第35回「ATP賞テレビグランプリ」の受賞結果が、日本のテレビ番組制作業界に大きな波紋を広げています。ATP賞とは、全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)に加盟する121社のプロフェッショナルが、約200本の作品の中から優れた番組を選ぶ、いわば「プロが選ぶプロの賞」であり、その評価は業界の現状を鋭く映し出す鏡なのです。

今回の発表で特に目を引いたのは、グランプリの三部門、すなわち「ドキュメンタリー」「情報・バラエティー」「ドラマ」の最優秀番組が、すべてNHKの番組であったという事実でしょう。受賞したのは、「テロリストの母と呼ばれて 闘いと再生の記録」(NHK BS1)、「見上げればあなたはいつもそこに~祝還暦・拝啓東京タワー様~」(NHK BSプレミアム)、「透明なゆりかご」(NHK総合)という顔ぶれです。さらに、海外展開を目的とした総務大臣賞も、NHK BSプレミアムの「スローな武士にしてくれ 京都撮影所ラプソディー」が獲得し、まさに「NHK優位」というべき圧倒的な結果となりました。

この状況は、民放や番組制作会社に所属する人々の間で深刻な不安を生んでいます。「このままでは、制作への情熱や意欲が薄れてしまう。将来的に業界を目指す人材が集まらなくなるのではないか」と、現場の社員からも危機感が聞かれます。事実、この「NHK優位」の傾向は数年前から顕著になり、優秀賞を見ても、十数本の中で地上波民放の作品は毎年3本程度しか選ばれていません。審査に関わる関係者も、以前は「バランスを取ろうと意識していた」ものの、最近は「NHK優位の状況を率直に評価しようとしている」と明かしており、プロの目から見ても、その差は明白になっていると言えるでしょう。

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制作費の問題だけではない!NHKの「懐の広さ」と民放の苦悩

この結果の背景には、民放各局の制作費削減があるのではないか、と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、審査委員長を務めたテレパックの沼田通嗣取締役によると、それは違うようです。プロの評価基準は、「予算をふんだんに使うこと」ではなく、むしろ「この限られた金額で、いかに質の高い番組を作り上げたか」という点にあるからです。この言葉から、単なるコストカットの問題ではない、より根深い構造的な課題が浮かび上がってきます。

では、なぜNHKが優位なのでしょうか。沼田氏は、NHKの魅力は「新しい企画への懐の広さ」にあると指摘しています。広告収入に依存する民放の場合、視聴者にウケるだけでなく、広告主が満足し、商品が売れることに直結する番組づくりが求められます。テレビ業界全体がネットに押されて苦境にある現代において、テレビ関係のセミナーでは、いかに広告効果を説明するかが重要なテーマとなっており、それが視聴者が本当に見たいと感じるような斬新な企画の誕生を妨げているのかもしれません。

結果として、テレビは「面白くない」と感じる若い世代の心を捉えられずにいるのではないでしょうか。テレビが「モノを売るための道具」に終始してしまえば、公共放送としての使命を持ち、より多様な企画に挑戦できるNHKに対し、民放が優位に立つことは難しいと言えるでしょう。

番組制作会社の「リスク回避」姿勢とネットフリックスの存在

さらに、番組制作を取り巻く環境にも問題があります。一つは、放送局が制作会社に対し、番組企画の開発費を出さないことです。企画を練り上げるには、当然ながら時間と人手、つまりお金がかかります。にもかかわらず、ほとんどの場合、制作会社がその費用を負担し、企画が不採用になればその努力は水の泡となってしまうのです。これでは、リスクを負ってまで新しい企画に挑戦する機運が削がれてしまうでしょう。

しかし、ここに風穴を開けようとしているのが、海外から上陸したネット配信サービスです。特にネットフリックスは、番組開発費を負担するという姿勢を見せており、日本の番組制作関係者の間で大きな期待を集めています。これは、制作会社にとって、テレビ局という一つの販路に依存しない、新たなビジネスチャンスの到来を意味しているのではないでしょうか。

一方で、制作会社自身の「リスクを取らない姿勢」もまた問題だと指摘されています。安定したテレビ局の「下請け」という立場に慣れきってしまい、売り上げを増やすための海外販売や放送以外の展開、すなわち二次利用といった新しいビジネスにリスクを冒してまで挑戦する意欲が乏しいのです。その結果、番組に付随する権利を持つこともできず、ビジネスを拡大する機会を逃していると言えます。

🔥編集者としての提言:テレビ業界の活路は「クリエイティブ」と「権利」にあり

インターネットの普及により、テレビというメディアそのものの存在意義が問われる時代です。それは同時に、番組制作会社も、そのビジネスモデル制作姿勢が厳しく問われていることを意味します。私見ではありますが、民放と制作会社がこの危機を脱し、NHKと伍していくためには、この「ATP賞」の結果を真摯に受け止め、根本的な変革を行うべきだと考えます。

具体的には、制作会社は「下請けマインド」から脱却し、リスクを恐れずに独創性を追求する企画開発に投資すべきです。そして、その番組の著作権付随する権利をしっかりと確保し、海外展開や配信など、多角的なビジネスモデルを構築することが急務でしょう。また、民放局も、短期的な広告効果に囚われるのではなく、視聴者の心を掴む真に面白い番組への投資、つまり制作会社への開発費負担など、未来への投資を惜しむべきではありません。この「NHK優位」の現状は、業界全体が「クリエイティブ・ファースト」の精神を取り戻すための、最後の警鐘なのかもしれません。

なお、最優秀番組の中から選ばれるグランプリは、全加盟社の投票によって、この記事が制作された後の2019年7月11日に決定する予定です。どの番組が栄冠に輝くのか、そしてこの「NHK優位」の波が今後どのように変化していくのか、業界の未来を占う上で、引き続き注目していくべきでしょう。

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