自動車業界に大きな変革の波が押し寄せるなか、自動変速機(AT)の分野で世界をリードするアイシン・エィ・ダブリュ(AW)が、中国市場での競争力を高めるべく大胆な一手に出ました。2019年11月19日、同社は中国にある連結子会社2社を2020年10月に合併することを正式に発表したのです。
今回の組織再編では、駆動装置の設計と開発を専門とする「エィ・ダブリュ蘇州テクニカルセンター」が存続会社となります。ここに、変速制御ソフトウェアの開発を担う「エィ・ダブリュ杭州ソフトウェア」が吸収される形で統合が進められる計画です。ハードとソフトの両輪が一つになることで、より強固な体制が構築されるでしょう。
ハードとソフトの融合で生まれるスピード感
合併の最大の目的は、開発スピードの劇的な向上にあります。ここでいう「駆動装置」とは、エンジンの力をタイヤに伝えるトランスミッションなどの物理的な機構を指します。一方で「変速制御ソフト」とは、走行状況に応じていつギアを変えるべきかを瞬時に判断し、装置を動かすための、いわば車の「脳」にあたるプログラムのことです。
これまでは別々の組織で動いていた物理的な設計とソフトウェアの開発が、一つの会社として統合されるメリットは計り知れません。現場での連携が密になることで、複雑な中国市場のニーズに対しても、迅速なレスポンスが可能になるはずです。次世代モビリティへの対応が急務となるなか、この決断は極めて理にかなった選択だといえます。
SNSなどのネット上でも、「ハードとソフトの一体化は必然の流れ」「中国メーカーのスピード感に対抗するにはこれしかない」といった、業界の動きを肯定的に捉える声が多く見受けられます。世界最大の自動車市場である中国において、アイシンAWがどのようなシナジーを生み出すのか、多くの関係者が熱い視線を注いでいるのです。
筆者の視点としては、今回の合併は単なるコスト削減や組織のスリム化ではなく、生き残りをかけた「攻めの統合」であると感じます。今の自動車開発においては、機械部品の性能以上に、それを制御するIT技術の重要性が増しています。2020年10月の新体制発足は、同社のグローバル戦略における重要なターニングポイントになるでしょう。
コメント