美しい古都・京都が今、深刻な「オフィス枯渇」という問題に直面しているのをご存じでしょうか。国内外からの観光客が急増し、宿泊需要が高まった結果、投資マネーがより収益性の高いホテル建設に集中しているのです。この「ホテル熱」に押され、肝心のオフィスビルの新規供給が停滞。結果として、企業の進出や事業拡大に必要なビジネス環境が整わず、都市としての競争力が削がれることが懸念されています。
現状、京都市内のオフィス空き室率は驚くべきことに$0%台を推移しています。これは、オフィスを探している企業側の需要に対して、供給が全く追いついていないことを示しており、∗企業進出∗∗の大きな足かせとなっていると言えるでしょう。不動産サービスのCBREの調査によれば、2019年3月期における京都のオフィス向け賃貸不動産の空き室率は0.5%$に達し、東京23区(0.6%)や大阪(1.3%)、神戸(1.7%)といった他の主要都市をも下回る、極めてひっ迫した状況です。
この需要過多を受け、オフィスの賃料は2017年以降、過去最高値を更新し続けています。市内の想定成約賃料は1坪あたり1万4,300円と、3年前と比較して約3,000円も上昇。専門家からは、「オフィス向け不動産は、新設されないばかりか、この数年間で取り壊されてホテルなどに転換されるケースが増えてきた」という指摘も出ています。本来、企業の活動を支えるべきオフィスが不足し、価格が高騰する状況は、京都経済にとって由々しき事態だと考えられるでしょう。
実際に京都市内では、JR京都駅周辺では2019年5月末にJR西日本グループの新ホテルがオープンするなど、ホテル建設ラッシュが続いています。市街地の中心を南北に走る烏丸通沿いでも、アメリカ発の「エースホテル京都」(京都市中京区)が2020年春に開業を予定しており、勢いは止まりません。これにより、市内の宿泊施設の客室数は2020年時点では5万3,000室を超える見込みで、2015年時点の約3万室から約2万3,000室も増加することになるのです。
一方で、オフィスビルへの投資は冷え込んでおり、延べ床面積が3万3,000平方メートル以上などの条件を満たす大型オフィス向け不動産ビルでは、2011年以降、新設が途絶えてしまいました。市中心部でオフィスビル8棟を所有する弥栄自動車(京都市)の不動産部によると、「昨年から空き室ゼロの状態が続いており、それぞれのテナントで数件の空き室待ちが出ている」とのことです。また、オフィスビル10棟を運営する長谷ビル(京都市)でも、「空きが出ても館内での増床で埋まってしまい、市場に空き室情報が出回る前に部屋がなくなることが多い」という声が聞かれ、市場の動きの速さを示しています。
🏙️古都の景観を守りつつビジネス環境を整える「高さ規制緩和」の試み
京都には多くの大学が集積しているため、優秀な人材の供給源として魅力があります。実際にLINEのようなIT(情報技術)企業が開発拠点を新設する動きも相次いでおり、オフィス需要は高まる一方です。このままオフィス不足が続けば、都市の競争力が低下しかねないと危機感を抱いた京都市は、対策に乗り出しました。特に、京都では伝統的な街並みを保存するため、景観条例に基づき厳しい建物の高さ規制が設けられています。
京都市は2019年5月、民間の産業集積施設である「京都リサーチパーク」(下京区)が立地するエリアにおいて、建物の高さ規制を緩和する考えを明らかにしました。これは、一定の条件を満たせば、建物の高さの上限を現行の規定から11メートル上乗せし、31メートルまで許可するという内容です。このほかにも、京セラや任天堂などの本社がある市南部の集積地区「らくなん進都」では、容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)を現行よりも100〜200%上積みし、建物の規模を拡大できるようにする方針です。今後は、地域ごとに高さやデザインのルールを策定していく計画だと言います。
京都リサーチパークは現在、満室状態が続いているため、運営会社は2021年春をめどに最大規模の新棟を稼働させ、オフィス不足の解消を目指す計画です。さらに、京都駅近辺にある市の廃校をコワーキングオフィス(共有型のオフィススペース)として活用することも検討されています。これらの施策は、歴史的景観を重視する京都にとっては、都市の活性化を図るための重要な一歩となるでしょう。
しかし、こうした対策が実際にオフィス供給の増加という形で現れるには、時間を要すると見られています。最も早くて2~3年後になるとの予測が出ており、「特に企業が進出したがる四条烏丸などでは、需給バランス改善の兆しが見えない」と、三井不動産の関係者は語っています。当面は供給不足が続き、企業の進出意欲を阻む状況が続くと見られるでしょう。この古都ならではの「オフィス不足」というジレンマは、SNSでも大きな反響を呼んでおり、特に「観光優先で本当に大丈夫なのか」「働く場がなければ結局、人が離れてしまうのでは」といった、都市の持続可能性を懸念する声が多く見受けられます。
私見ではありますが、京都が世界に誇る観光都市であることは疑いようがありませんが、同時に、優秀な人材が集う「知の都」としての側面も保持し続けることが重要です。オフィス不足による都市の活力低下を防ぐためにも、景観保護とビジネス環境整備のバランスを取る、市の一層の戦略的な取り組みが求められるでしょう。このオフィス枯渇問題は、京都の将来を左右する重要な課題であると言えます。
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