半導体業界の巨人、ルネサスエレクトロニクスが、大規模なM&A(合併・買収)によって急増した有利子負債の返済計画を明らかにしました。2019年6月22日、同社の柴田英利・最高財務責任者(CFO)が日本経済新聞の取材に応じ、今後「年1000億円ほど」を返済していく方針を語っています。この発表は、巨額の投資を実行した同社の財務健全性に対する強いコミットメントを示すものと言えるでしょう。
この有利子負債の膨張は、同業である米国のインテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収が主な要因です。IDTは、高速通信やIoT(モノのインターネット)分野で強みを持つ企業であり、ルネサスの事業領域拡大に不可欠と判断されました。しかし、その代償として、2018年12月期末には約2000億円だった有利子負債が、買収完了後の2019年3月末にはなんと9651億円と約5倍にまで跳ね上がっています。買収資金として、三菱UFJ銀行やみずほ銀行など複数の金融機関から7000億円近くを借り入れたことによるものです。
ただし、足元の業況は厳しさを増しています。半導体市況の楽観的な見通しから一転、在庫が過剰となり、さらには米中間の貿易摩擦が自動車や産業ロボット向けの需要減退を招いたため、一時的に工場稼働を停止するなど、逆風に晒されている状況です。そのため、柴田CFOは、目標とする財務改善のペースが「遅れる」見込みであることを認めています。これは、現下の市場環境の厳しさを正直に反映した発言であり、警戒感を示すとともに、現実的な対応を示唆していると評価できるでしょう。
財務改善の裏付けとなる収益力については、IDTが連結子会社となった2019年4月以降のキャッシュフロー(現金収支)に大きな期待が寄せられています。柴田CFOは、買収後の「調整後EBITDA」が「年2000億円か、それ以上を確保できる」という見通しを述べており、IDTの貢献分だけで「年300億円押し上げられる」としています。ここで言う「調整後EBITDA」とは、一時的な買収関連費用などを足し戻した**EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)**のことで、企業の本来的な収益力を示す指標として重視されます。前期の調整後EBITDAは2006億円でしたが、市況の悪化が直撃した2019年1月~3月期は323億円に留まっていましたから、IDTによる収益貢献は極めて重要であると言えるでしょう。
財務健全化への具体的な目標と戦略
ルネサスが掲げる財務改善の目標は、「純有利子負債」を調整後EBITDAの1倍まで下げることです。純有利子負債とは、有利子負債から現預金などを差し引いた実質的な借入額を指し、この指標が1倍であれば、年間で稼ぎ出すキャッシュフローで実質的な借入金を1年で返済できる計算になり、財務的に健全な状態とみなされます。買収発表時の2018年9月時点では、この目標を「買収完了から2年強」で達成する計画でした。しかし、前述の通り市況の悪化により、計画に遅れが生じる可能性が示唆されています。
今後、ルネサスは財務改善を最優先事項とし、さらなる大型M&Aの検討は、「借入金をある程度返してからになる」と当面は見送る方針です。これにより、まずはIDTとの統合効果を最大限に引き出し、借り入れた資金の返済に注力する姿勢が明確になりました。また、設備投資についても、売上高に対する比率を「5%の範囲内におさめる」としており、直近のルネサスとIDTの合計売上高に基づけば、年間400億円程度に抑制する見込みです。これは、無駄な投資を抑え、キャッシュアウトを最小限に留めるという堅実な戦略を物語っているのではないでしょうか。
このルネサスの戦略については、SNS上でも大きな反響を呼んでいます。特に「有利子負債1兆円近いのはさすがにデカい」「IDT買収で未来を取ったのは評価できるが、市況の読みが甘かったのでは」といった、期待と懸念が入り混じる声が多数見受けられます。また、「M&A後の迅速な返済計画は評価したい」「設備投資を抑えるのは賢明な判断だ」といった、経営陣の舵取りに対する賛同意見もあります。ルネサスの挑戦は、半導体業界の注目を集めるだけでなく、日本の製造業のグローバル戦略の行方を占う試金石となるでしょう。私自身の意見としても、この巨額な借入金に対する具体的な返済目標の設定と、当面のM&A凍結・設備投資抑制という徹底した財務規律は、企業が成長と安定を両立させるために必要な、非常に説得力のある戦略であると考えます。
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