講演会やビジネスの場でジャケットやスーツを着用する際、ふと上着のボタンをどうすべきか迷った経験はありませんか。実は、男性と女性では上着のボタンに関するマナーの考え方が異なっているのです。この違いを知らないと、親切心から「ボタンが外れていますよ」と指摘されるなど、不要な誤解を招いてしまうかもしれません。
まず、男性がスーツの上着のボタンを留めることには明確な理由があります。それは、ワイシャツがもともと「下着」と見なされていたため、下着が安易に見えないように上着のボタンで隠すという配慮から始まった習慣なのです。日本では湿度の関係で下着の上にワイシャツを着る方が多いようですが、欧米ではワイシャツを素肌に直接着ることも珍しくありません。この習慣は、日本の着物における長襦袢(ながじゅばん)と着物の関係に似ており、長襦袢がワイシャツ、着物がスーツの上着というイメージで捉えると分かりやすいでしょう。また、男性であってもベスト(ジレ)を着用している場合は、すでに下着を隠す役割を果たしているため、上着のボタンを留める必要はないとされています。
一方、女性がブラウスの上にジャケットを着る場合、ブラウスは下着とは見なされないため、上着のボタンを「必ず留めなければならない」というルールはありません。そのため、女性は上着のボタンを留めても留めなくても、どちらでもマナー違反にはならないのです。着こなしの好みや、より快適に過ごしたいという考えから、ボタンを留めずに着用するスタイルも全く問題ありません。この自由度の高さは、女性ならではのビジネスファッションの魅力と言えるでしょう。
では、男性のスーツのボタンのルールについてもう少し詳しく見てみましょう。着席している間は、ボタンを外すのがスマートです。ボタンを留めたままだと生地に負担がかかり、窮屈になって襟元が引っ張られてしまうためです。座るときに外し、立ち上がりながらスムーズにボタンを留め直すという動作は、非常に洗練されていて魅力的な所作に見えるものです。また、留めるボタンの位置も決まっています。たとえば2つボタンの場合は上段の一つだけ、3つボタンの場合は真ん中の一つだけ、または上と真ん中の二つを留めるのが基本マナーとされています。一番下のボタンは基本的に飾りであり、留めないのが原則なのです。
この上着のボタンに関するマナーは、2019年6月22日にマナーデザイナーの岩下宣子氏が解説した内容です。この「女性はボタンを留めなくて良い」という情報は、SNSでも「知らなかった!」「これで安心してボタンを開けていられる」「男性のボタンの理由も初めて知った」といった反響を呼び、特に多くのビジネスパーソンから注目を集めています。長年の疑問が解消されたという声も多く、ビジネスシーンでの立ち居振る舞いに関する関心の高さを伺い知ることができます。
私は、マナーとは相手への敬意を表すための形式であり、知っているとより気持ちよく過ごせるための知識であると考えています。特に女性の場合、ファッション性と機能性のバランスを取りながら、ボタンの開閉を自由に選択できるというのは大きなメリットです。ぜひ、ご自身のスタイルや状況に合わせて、上着のボタンの扱い方をスマートに使い分けていただきたいと思います。この知識を活かして、TPO(時・場所・場合)に応じた洗練された着こなしを目指しましょう。
コメント