ショッピングセンター(SC)業界は、もはや「モノを売る」だけでは生き残れない時代に突入しました。二〇一九年五月二十八日の報道が示すように、この十年間で市場規模こそ拡大したものの、Eコマース(EC)の台頭と少子高齢化という逆風を受け、従来の物販での成長は限界を迎えています。この現実に、トヨタグループがいち早く「答え」を出そうとしています。
その「答え」こそが、飲食や体験型店舗、イベントといった「コト消費」の徹底強化です。「コト消費」とは、商品そのもの(モノ)ではなく、そこでしか得られない体験や経験に価値を見出す消費スタイルを指します。SNS上でも「モノはネットで買うけど、体験は現地で」という声が主流であり、SCは今や、いかに魅力的な「体験」を提供できるかで競い合う時代になったのです。
この「コト消費」競争の最前線に立つのが、トヨタグループが運営する「カラフルタウン岐阜」(岐阜市)です。二〇一九年秋には、増床によって新エリア「エミノワ」を開設する計画が発表されました。アウトドアのイベント広場、ハワイアンカフェ、英会話教室などが集うこの新エリアは、まさに「コト消費」の象徴であり、車での来場を促す仕掛けでもあるのです。
私自身、このカラフルタウン岐阜の挑戦に注目すべきは、彼らが「元祖パイオニア」であるという事実です。二〇〇〇年にトヨタ紡織の工場跡地に開業した当初から、SC内でトヨタ系五系列とダイハツの新車を販売するという、当時の常識を覆す先行モデル(現在年間約千五百台販売)でした。二〇一九年春からトヨタが東京で始めた「全車種併売」を、岐阜では二十年近く前から実践していたことになります。
そして今、自動車業界が「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」という百年に一度の大変革期を迎える中、トヨタにとってこのSCの価値は激変しました。ここは「人、モノ、車、エネルギー、情報」が集う社会インフラの拠点です。この場所で「コト消費」と「最新技術(CASE)」をどう結びつけ、地域住民のニーズを先取りできるか。カラフルタウン岐阜の挑戦は、SCの新たな成長モデルを示す、重要な試金石となるでしょう。
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