視覚が奏でる幻想的なリズム!ブリジット・ライリー「朝の歌」が誘うオプ・アートの新境地

私たちの眼は、時として現実をありのままに捉えるだけでなく、心地よい錯覚に身を委ねることがあります。イングランドが誇る世界的画家、ブリジット・ライリーが1975年に発表した「朝の歌(Aubade)」は、まさにそんな視覚の不思議を体験させてくれる傑作です。アクリル・リネンに描かれた211×272センチという壮大なスケールの画面を前にすると、静止画であるはずの絵画が、まるで生き物のように呼吸を始めます。

彼女の作風は一般的に「オプ・アート」や「オプティック・アート」と呼ばれます。これは「光学的な」という意味の言葉で、錯視を利用して画面が動いているような効果を与える芸術ジャンルを指します。しかし、ライリーの表現は、単なる計算に基づいた無機的なパターンではありません。彼女の筆致には、自然界に存在する波のうねりや、風に揺れる葉むらのざわめきを抽象化したような、有機的な温かみが宿っているのです。

この作品を鑑賞していると、焦点を合わせようとしても視線がふわりと逸れていくような、不思議な感覚に包まれるでしょう。SNS上でも「ずっと見ていられるけれど、目が離せなくなる」「色の重なりが音楽のように聴こえてくる」といった驚きの声が上がっています。ライリーという名から、反復を重んじるミニマル・ミュージックの旗手、テリー・ライリーを想起する方も多いようですが、彼女の描く曲線には独自の時間の流れが存在します。

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巨匠が描く色彩の調べとデリケートな動き

同じオプ・アートの大家であるヴィクトル・ヴァザルリの硬質なスタイルと比較すると、ライリーの描く「朝の歌」がいかに優しさに満ちているかが際立ちます。反復される形が作り出すうねりは、鋭い刺激ではなく、ゆったりとしたデリケートな動きとなって見る者を幻惑します。パステル調の色彩が持つ柔らかさは、まるで朝の光が空に溶け込んでいく瞬間を捉えたかのようで、観る者の心に深く、それでいて穏やかな衝撃を届けてくれます。

個人的な見解を述べさせていただくなら、この作品の真価は「静寂の中の躍動」にあると感じます。モネやスーラといった印象派の流れを汲みつつ、それを現代的なパターンへと昇華させたライリーの手腕は見事というほかありません。DIC川村記念美術館に収蔵されているこの名画は、理屈を超えて私たちの感性に直接語りかけてきます。2019年12月23日現在、忙しない日常の中でこそ、こうした視覚の音楽に身を浸す時間は必要不可欠ではないでしょうか。

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