【SNSの反応も】IT巨人の「コード」が世界のルールになる日:AI時代のプラットフォーム責任と立法者の不在

現代社会におけるIT企業の責任は、かつてないほど重大なものになっています。特に、米国のシリコンバレーに拠点を置くような巨大な情報プラットフォーム企業は、そのサービスを通じて世界中の人々の生活や思考に影響を及ぼしています。カリフォルニア大学法学部のデビッド・ケイ教授は、彼らの果たす役割を「現代の立法者」と表現されていますね。これは、彼らが作るユーザー規定が、事実上、国家の法律に匹敵するほどの強い影響力を持っているという見解を示しているのです。

2019年5月にサンフランシスコ市で開催された「ウェブ・カンファレンス」は、ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の誕生30周年を記念する学会でした。このイベントの隠れた核心的なテーマは、巨大なネット企業の持つ力の分析でした。例えば、米フェイスブックや米グーグル傘下のユーチューブといったプラットフォームが定めている投稿ルールが、世界20億人を超えるユーザーが日々接する情報の内容を実質的に決めているわけです。テロリズムや暴力といった投稿を原則として禁止する同社の規定一つとっても、その「さじ加減」が社会に与えるインパクトは計り知れません。

しかし、巨大IT企業の持つ力は、こうした目に見える利用規定だけではありません。より強力なのが、「コード」と呼ばれる力です。差別問題に詳しい作家のバラトゥンデ・サーストン氏は、「ソフトウエアを形作るソースコード自体がユーザーに影響を与える」と警鐘を鳴らしています。アルゴリズム(問題を解決するための計算手順や処理方法)の設計一つで、人工知能(AI)が意図せずバイアス(偏見や偏り)を生み出し、SNS上での情報伝達に影響を及ぼす可能性も指摘されているのです。

このバイアスの深刻な実例として、グーグルでAI倫理を担当するティムニット・ゲブル氏の研究が挙げられます。氏の調査によると、市販の顔認証システムにおいて、白人男性に対する認識精度は高いものの、有色人種でかつ女性であるほど、誤った認識をしがちという結果が示されました。ハーバード大学法学部のローレンス・レッシグ教授は、この状況を「コードが法律化している」と読み解いておられます。ネットサービスが社会に浸透すればするほど、その設計自体に公的な責任が伴うという構図が明確になっているのです。

残念ながら、巨大IT企業はこの急速に増大する社会的な責任への対応が追いついていないのが現状と言えるでしょう。2019年6月10日には、米ネットメディアのイベントに出席したユーチューブのスーザン・ウォジスキ最高経営責任者(CEO)が、聴衆から厳しい批判を浴び、謝罪に追い込まれる事態が発生しました。これは、同性愛者を揶揄する動画の削除対応が遅れたことによるもので、「合法だが社会的に問題がある投稿」に対する自社のルールでの線引きと摘発がいかに難しいかを示しています。

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巨大な社会的責任と規制のジレンマ

米アマゾン・ドット・コムで音声AIを担当するトニー・リード副社長が「世界のあらゆるリスクを事前に製品に織り込むのは困難だ」と語るように、サービスの設計段階で全ての社会的リスクを想定することは不可能に近いのかもしれません。しかし、だからといって、この巨大な社会インフラを放置するわけにはいきません。では、民間に代わって政府が積極的にネットの世界を管理するべきなのでしょうか。

この点については、少なくとも自由なネット環境を重視する米国においては、まだ結論が出ていません。「政府に任せればネットの国家統制につながる」と、前述のケイ教授は指摘されています。ウェブ・カンファレンスでも、政府と企業が協調してネットのルールを共に考えていくべきだという提言にとどまりました。現時点では、明確な解決策は見つかっていませんが、一つ確かな現実として、巨大IT企業が、もはやその社会的責任から逃れることができなくなったという点があります。

選挙で選ばれたわけではない現代の「立法者」であるIT企業のエンジニアや経営者たち。彼らが社会のルールを規定するコードを書くという重みは、インターネットが誕生した30年前と比較して、計り知れないほど増しています。もし彼らの判断や対応が社会の支持を失い続ければ、ユーザーの離反を招き、結果として政府によるネット規制が現実味を帯びるでしょう。私は、IT企業には、短期的な利益だけでなく、世界をより良く導くための倫理的な視点と、積極的なルール作りの責任を果たす覚悟が求められていると強く感じます。

この「コードが法律になる」という議論は、SNS上でも大きな反響を呼んでいます。「選ばれてない人がルールを作るのはおかしい」「AIのバイアス問題は本当に怖い」といった懸念の声が多く見られます。一方で、「政府が全てを規制するのも危険」といった意見や、「プラットフォームの透明性を高めるべき」という建設的な提言も見受けられます。社会の重要なインフラとなったIT企業のあり方を、私たちユーザーも含め、真剣に議論していくべき時が来ていると言えるでしょう。

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