🚜岩盤規制に挑む!農業特区5年の成果と課題:企業参入の「突破口」は地方創生の救世主となるか?

政府が推進する国家戦略特区(こっかせんりゃくとっく)、すなわち、地域の活性化を目的として、特定の規制を大胆に緩和する特別区域の指定が開始されてから、2019年5月で5年の節目を迎えました。特に、これまで「岩盤規制」と呼ばれてきた農業分野における規制緩和は、地方の活性化に向けた大きな鍵として注目されています。この5年間で、企業による農業への新規参入は確実に進展を見せているものの、その道筋は依然として険しい状況にあると言えるでしょう。

規制緩和の旗手として、兵庫県養父市(やぶし)では、全国に先駆けて企業が農地を初めて取得した事例が誕生しました。また、新潟市でも、農業生産法人の設立要件を緩和する措置を利用した企業の参入が進んでおります。しかしながら、いずれの地域も参入企業数の伸びは頭打ちになっており、現場からは制度の使い勝手や規制緩和の度合いに対する不満の声が上がっているのが実情です。地方の農業が抱える高齢化や後継者不足といった根深い課題を解決し、地域を活性化させるには、さらなる改革が必要とされています。

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企業参入のモデルケース:兵庫県養父市の「農地取得」実現

兵庫県養父市では、企業の農地取得を可能とする大胆な規制緩和が行われました。通常、農地を取得できる**農業生産法人(のうぎょうせいさんほうじん)へ企業が出資できる比率は50%未満と定められています。これは、戦後の農地改革に基づく「自作農主義」、すなわち農地の所有者は耕作者であるべきという考え方が背景にあるためです。しかし、養父市はこの規制を特例で50%以上に緩和し、企業の農地取得を全国で初めて実現いたしました。

住宅施工を行う山陽アムナック(兵庫県三木市)は、この特区制度に着目し、2015年に農家などと共同でアムナックという法人を設立しました。同社の藤田彰社長は、企業が50%以上出資して営農できる点が参入の決め手になったと語っています。市域の84%が山林で営農条件が厳しいとされる養父市において、気候が酒米の生産に適していると判断し、同年から栽培をスタート。養父市の広瀬栄市長は、これを「農業の革命」だと称賛しています。

アムナックは、市内の能座地区で耕作が見込まれていなかった合計8.4ヘクタールの水田を再生させました。これは同地区の農地の約半分に相当する面積です。高齢化や後継者不足に悩む他地域の農家からも営農の依頼が増加しているとのことで、地域の農家もこの取り組みを好意的に受け入れている状況です。収穫した酒米は県内外の酒蔵に販売され、純米酒ブランド「能座ほまれ」が誕生。2017年からは台湾への日本酒輸出も開始し、2018年度には売上高1,600万円を達成、初めて収支が黒字化いたしました。

養父市では、製本業の兵庫ナカバヤシもニンニク栽培のために農地を取得するなど、農業特区を利用した事業者は13社に上り、農地は合計46.6ヘクタール(2019年3月末時点)に拡大しています。うち、農地を取得したケースは5社で、面積は1.35ヘクタールに達しています。企業の持つ資金力や経営ノウハウが、地方の耕作放棄地(こうさくほうきち)の再生に貢献し、新たな特産品の創出につながる可能性を示していると言えるでしょう。

制度の使い勝手に課題:期限付きの農地取得と煩雑な手続き

企業参入が進む一方で、養父市側には規制緩和の不十分さに対する不満が残っています。例えば、企業が農地を取得できる期間は5年間に限られており、2021年の期限を前に「継続されるか分からない」という不安を抱えているのです。また、市が農地を一旦買い上げてから企業に売却するという仕組みが煩雑で、事務作業の増加と時間的なロスが発生し、企業が迅速な経営判断を下せない可能性も指摘されています。広瀬市長は、市が間に入らなければ農林水産省が許可を出さなかった状況を挙げ、「渋い表情」を見せています。

新潟市の取り組みと更なる緩和への期待

同じく農業特区に認定されている新潟市では、企業による農地取得は認められていませんが、農業法人の設立要件が緩和されました。これにより、ひらせいホームセンター(新潟市)が農業法人「ひらせいファーム」を設立し、耕作放棄地となる恐れが強い約1ヘクタールを借りてスイカなどを栽培しています。ひらせいホームセンターの清水泰成副社長は、付加価値の高い青果を自ら企画・生産し、卸売業者などを通さずに市場価格より安く新鮮な作物を提供できる点を強調しています。ひらせいファームの2018年9月期の売上高は2億円に達し、2期連続の黒字を達成しました。

特区制度の開始以来、新潟市内の耕作放棄地は減少傾向にあり、2016年には2014年から約20ヘクタール減の165ヘクタールとなりました。しかし、この成果に貢献した企業は6社、面積は8ヘクタールにとどまっています。このため、新潟市では養父市で認められた農地取得の緩和など、更なる規制緩和の拡大を国に期待しています。「企業の農地取得が緩和されれば、参入企業は大幅に増えるでしょう」と、新潟市ニューフードバレー特区課は話しています。

広がる緩和要求:バイオ燃料への農地転用を目指す声も

企業側からも、規制緩和の拡大を求める声が上がっています。特区で農業法人に出資する農業資材販売の冨山(新潟市)の冨山道郎社長は、農地の転用規制について「大胆に取り組んでほしい」と訴えています。同社は、トウモロコシなどを原料とするバイオ燃料(ばいおねんりょう)**による発電施設に農地を利用することを目標としていますが、現時点では認められていません。冨山社長は、これが実現すれば「コメだけではない新潟の魅力を発信できる」と期待を込めています。中原八一市長も、農業の活性化に向けたさらなる緩和を国に求めていく姿勢を示しています。

秋田県仙北市でも、企業の農業参入は2社にとどまり、耕作放棄地の活用は十分に進んでいない状況です。企業参入による耕作放棄地の活用は、地方創生に繋がる大きな可能性を秘めています。地方の活性化という「芽」を確実に育てるためにも、特区制度のより柔軟で大胆な運用が求められています。

SNSの反響と専門家の見解:期待と不安が交錯する農業の未来

今回の農業特区における企業参入の動きに対して、SNS上では様々な反響が寄せられています。「耕作放棄地が減るのは良いこと」「企業が入ることで、農業にもっとプロの経営視点が入るべき」と、特区の試みを評価する声がある一方で、「企業は失敗したらすぐに撤退するのではないか」「地元の農家が不利にならないか」といった不安や懸念を示す意見も根強く見られます。特に、日本の農業経営体の98%が家族経営であるという背景もあり、企業と地域農家との共存を求める声も多く見受けられました。

専門家からは、規制緩和の必要性を肯定的に捉える意見が多く出ています。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、農場の所有者と経営者・耕作者が同一である必要はなく、「プロが経営するのが望ましい」と指摘しています。また、みずほ総合研究所の堀千珠主任研究員は、高齢化に悩む自治体が積極的に特区を進めている点を評価しています。さらに、中小企業研究センターは、参入した企業が収益を確保するためには、「生産活動と並行して販路開拓を始めることが重要」だと提言しています。

💡編集者としての視点:大胆な規制緩和こそが未来への扉を開く

私見ではございますが、日本の農業が抱える慢性的な課題、特に資金や労働力、後継者不足の解決には、企業の持つ経営資源やイノベーション力が不可欠だと考えます。国家戦略特区は、長年続く「岩盤規制」に風穴を開ける絶好のチャンスです。養父市や新潟市の事例は、その「突破口」として非常に意義深いものです。

しかし、現在の規制緩和はまだ「道半ば」であり、期限付きの農地取得や煩雑な手続きなど、企業の真の力を引き出すには不十分な点が多いと感じます。農地制度の根幹にある「自作農主義」の精神は尊重しつつも、農業の国際競争力を高め、地方創生を実現するためには、農地転用に関する規制を含め、さらに大胆かつ柔軟な制度設計が必要不可欠であると確信しております。企業と地域農家が相互に利益を享受できる、真の「共存共栄」モデルの構築こそが、日本の農業の明るい未来を切り開く鍵となるでしょう。

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